WEC公式ルーキーテスト、山下健太がトヨタTS050のステアリングを握った。《写真提供 TOYOTA》

現地15日、バーレーン国際サーキットで実施された世界耐久選手権(WEC)の公式ルーキーテストにおいて、日本期待の新鋭、TOYOTA GAZOO Racing WECチャレンジプログラムのドライバーである山下健太がトヨタ「TS050 HYBRID」のステアリングを握った。

前日の14日に決勝8時間レースがあった2019/2020シーズン第4戦からの居残りという格好で行なわれた、「公式ルーキーテスト」という名目のWECテスト。現在の最上位クラスである「LMP1」のマシン、トヨタTS050(2台)には3人の若手ドライバー、いずれも前日の今季第4戦ではLMP2クラスで走っていた選手たちが搭乗している。そのなかには日本の山下健太(24歳)も含まれていた。

山下は2016年の全日本F3チャンピオン。近年は日本のトップカテゴリーを主戦場としており、2019年はSUPER GTのGT500クラスでドライバーズタイトルを獲得、スーパーフォーミュラでは9月の岡山戦で初優勝を飾った新進気鋭である。TOYOTA GAZOO Racing WECチャレンジプログラムのドライバーにも選抜され、19/20シーズンのWECにLMP2クラスで参戦中。中嶋一貴、小林可夢偉に続く存在として、近い将来、トヨタの最上位クラス実戦ドライバーとなることが嘱望されている。

15日のテストは2度の豪雨があり、特に午前のセッションは難しいコンディションだったという。ただ、総合ベストタイムシートのトラックステータスもウエットと表記されてはいるが、ベストタイムの水準的にはドライだった第4戦と変わらないものとなっている。

山下は44周を走って、1分44秒075がベスト。これはこの日の全体2番手タイムで、主にペースセッター的な立場で走行したと見られるトヨタTS050レギュラードライバーの可夢偉が出した1分43秒264に次ぐものであった。

トヨタTS050で走行した他の若手ふたりは、トヨタのテスト兼リザーブドライバーを務めているトーマス・ローラン(他陣営でLMP1優勝経験あり)と、2019年FIA-F2王者ニック・デ・フリーズ。ベストタイムはローランが1分44秒514、デ・フリーズが1分44秒561だった。タイムを出したときのコースコンディションはもちろん、タイヤの使用状況、そして2台のマシン仕様詳細等も(サクセスハンデキャップ等を含めて)分からないため、一概にはタイム比較できないが、山下は3人のなかでトップだったことになる。

山下健太のコメント
「TS050 HYBRID に乗る機会を与えて頂き、本当に感謝しています。まずはステアリング上のスイッチがたくさんあり、指示通りに操作するのに精一杯で、チームラジオに返答する余裕もなく大変でした。そこに慣れると、ある程度走れるようになり、新品タイヤも2セット使わせてもらい、ラップタイムも向上していきました。でも、まだ覚えなければならないことが多く、経験が必要ですね。今後も機会があれば乗りたいです」

WECの最上位クラスは来季(2020/2021シーズン)からハイパーカー規定に移行する。そのため、山下が実戦でTS050をドライブする機会はおそらくないだろうが、テスト等を通じてさらなる経験をTS050で積み、来季以降にトヨタのハイパーカー実戦ドライバーとなることが期待される。

今の時代にドライバーの国籍にこだわるのはナンセンスかもしれないが、トヨタと中嶋一貴が連覇中のルマン24時間レースにおいて、「日本メーカーのマシンに乗った日本人選手トリオによる総合優勝」というのは依然として成し遂げられていない。1999年には当時のトヨタTS020で片山右京、鈴木利男、土屋圭市のトリオが総合2位になっているが、2020年代(21年以降)、トヨタのハイパーカーで一貴、可夢偉、山下のトリオでのルマン優勝というのも見てみたい気がする。

なお、山下の2020年の活動に関しては、WEC19/20シーズンとの兼ね合い等から、SUPER GTへのレギュラー参戦継続はないとの観測がある。国内で彼の活躍を見る機会が減るとすれば残念だが、そのぶん、国際舞台での飛躍に期待したい。

トヨタTS050をドライブした山下健太。《写真提供 TOYOTA》 トヨタTS050をドライブした山下健太。《写真提供 TOYOTA》 トヨタTS050をドライブした山下健太。《写真提供 TOYOTA》 トヨタTS050をドライブした山下健太。《写真提供 TOYOTA》 WEC公式ルーキーテストの模様。《写真提供 TOYOTA》 WEC公式ルーキーテストの模様。《写真提供 TOYOTA》 WEC公式ルーキーテストの模様。《写真提供 TOYOTA》