MotoGP 日本GP ケンウッドブース《撮影 後藤竜甫》

モータスポーツの現場で、様々な場面で使用される無線通信システム。MotoGPを運営するDORNAではケンウッドの無線通信システムが採用されており、その理由を担当者から聞くことができた。

一般的な無線機同士の会話は“リピータ”、つまり受信したものを繰り返すという単純な通信である。その場合、無線機のチャネル数に依存しており、設定されたチャネル以上に会話が集中した場合は、他の通信が終了するまでは話すことができない。

ケンウッドの無線通信システムでは、Radio Activity社の中継機を経由させることでカバレッジを広げ、チャネルの切替えを制御して空いているチャネルを有効に使用することでトラフィックを分散。300人規模のDORNAでも遅延することなく会話できる通信システムを構築した。

この無線システムが活躍するわかりやすい場面は、なにか有事が起こるとき。例えばサーキットでクラッシュ発生すると、カメラチーム、エマージェンシーチーム、セキュリティチームなど様々なチームの人間が一気に会話をする必要がある。その時に300人がストレスなく話ができるということが重要となる。

具体的には、それぞれの役割に応じたグループに対してグループコールを行うことで、関係するスタッフへ一斉に指示が飛ぶ。その結果、瞬時に関係者への意思疎通ができるようになっている。また無線機ごとに個別のIDが振り分けられているので、個別の呼び出しやトップ同士のセキュアな会話を行うことも可能。同時に各IDに権限を設定することで、不必要な通信を制限しスムーズな運用を実現する。無線機と中継機のセットアップはコースによって地形や通信距離が変動するため、コースごとのアジャストについてはDORNAを中心に行っている。

DORNAでこの無線通信システムが採用されたのは2018年シーズンから。以前のシステムから大きく変わった点は、アナログ通信からデジタル通信へと変更されたことで、以前はアナログ通信のため膨大なチャネル数が必要であったという。

また、DORNAから通信プロトコルを「NEXEDGE」から「DMR」でやりたいという要望があり、それに応えられる無線通信システムとして同社に声がかかった。NEXEDGEからDMRへ移行した理由は、DMRが汎用性の高いプロトコルで、かつ通信効率をあげられるからだ。DMRは時分割多重アクセス(TDMA)方式により、帯域の幅はそのままで2つの時間枠へ振り分ける。そうすることで、2チャンネルを同時に運用しているのと同様の効果を得ることができるので、周波数の運用効率が実質2倍となる。DORNAでは300人規模での通信環境が必要であることからも、DMRへの対応が必須であるというわけだ。

ケンウッドの通信システムの特徴は、アナログとデジタルの切替、さらに通信プロトコルもNEXEDGE、DMRに対応する汎用性をもった通信システムである。また、通信端末も特別に用意されたものではなく、警察や消防などでも使用される標準企画の製品で、エントリーモデルも入れると幅広いレンジで使用される製品が揃っている。長年モータスポーツの領域で培われた通信技術は、“どのような過酷な騒音環境においてもクリアに会話することができる”というケンウッドの技術力を証明している。

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