防衛省の浄水車《撮影 山田清志》

「危機管理産業展」には毎回、災害時に活躍する特殊車両が数多く展示される。今回も10台ほどの車両が並び、普段見ることのできないものもあった。その中で来場者の注目を浴びた車両をいくつか紹介しよう。

まず圧倒的な存在感を示したのが、防衛省が展示した浄水車だ。河川や湖沼などから取水し、水中に含まれる濁質、細菌ウイルス、溶解成分などを除去し、飲料水や生活水を供給するための車両だ。

水処理装置として、ディスク式所濁装置、限外濾過器、逆浸透濾過器が搭載され、それらを通すことによって汚れた水でも飲料水に変え、ドーム状のタンクに貯水するようになっている。1日の浄水能力は30tで、貯水能力は10tだ。

「海水でも大丈夫ですが、河川の水などに比べてフィルターの傷みが早くなります」と防衛省の関係者は話し、飲んでもミネラル分がないため、あまり美味しくないそうだ。全国で数台しかない車両で、価格は約9000万円。

サポートマーケティングサービスはカナダ製の水陸両用車『ARGO(アルゴ)』を5台出展。その中で同社関係者が推薦したのが消防車仕様車だ。8輪駆動で消防研究センターと一緒に1年ほどかけて改造した。

可搬ポンプをはじめ、消防ホース、フォグランプ、ストレッチャーキット、キャタピラーラバーなどが装備されている。どこでも走れるのが特徴で、運転するには小型特殊免許と船舶2級免許が必要だ。これまでに全国の消防署28カ所と東京都、倉敷市、佐賀市、さいたま市に納入したという。

「鬼怒川の決壊や西日本豪雨災害、最近では大分県で中州に取り残された人の救出に使われました」と同社関係者。価格は2000万円を超えるそうだ。

そして、先日起こった千葉県の大規模停電で活躍した移動電源車。神戸製鋼グループ会社、神鋼造機が開発した車両で、ディーゼル発電装置と送電に必要なケーブルなど機材一式を搭載し、機動性に優れた非常用電源となっている。

一般住宅向け210V出力の低電圧車は75kVA、100kVA、150kVAの3種類あり、価格は3000万円からで主に電力会社に販売してきた。ところが最近になり、自動車メーカーや空港などに納入するケースが出てきているそうだ。

「千葉県の大規模停電の時は、北海道から沖縄まで電力会社が所有する移動電源車が230台千葉県に集結して電力の供給を行いました。イオン木更津とイオン成田の駐車場が待機場になって、そこから電力が必要な地区に出動しました」と神鋼造機の関係者は話し、年々問い合わせや引き合いが増えているという。

また、災害対応車ではないが、ユニークな搭乗型移動支援ロボットを発見した。アキュレイトシステムズが東京都立産業技術研究センターの助成を受けて開発したマルチパーパスモビリティがそうだ。

シニアカーモード、スタンディングモード、スケートボードモードの3形態に変化し、コンパクトで機動性があり、自動停止機能なども備わっていて歩行者と共存できるのが特徴だ。「まだ試作の段階で一般には販売していませんが、警備会社に1台納入して使ってもらうことになりました」とアキュレイトシステムズ関係者は話す。

いずれにしても災害対応車はいざというときに有り難い存在であることは間違いないが、できればそれらが活躍しないことを願うばかりである。

サポートマーケティングサービスが展示した『ARGO』の消防仕様車《撮影 山田清志》 神鋼造機の移動電源車《撮影 山田清志》 アキュレイトシステムズが開発したマルチパーパスモビリティ《撮影 山田清志》 アキュレイトシステムズが開発したマルチパーパスモビリティ《撮影 山田清志》 アキュレイトシステムズが開発したマルチパーパスモビリティ《撮影 山田清志》