消防車の消火技術を応用した泡シャワー《撮影 山田清志》

モリタホールディングスのグループ会社、モリタエコノスは東京ビッグサイトで開幕した「国際福祉機器展2019」に訪問入浴車「湯の香」と泡シャワーを参考出品した。それぞれ2020年夏の発売予定で、そのデモンストレーションには来場者も興味津々だった。

モリタといえば、消防車が有名だが、その歴史は古く、明治40年(1907)に創業者の森田正作氏が大阪市で消化器と消防ポンプ機の製造販売を開始したことから始まる。以来、数々の消防車を開発し、今やそのシェアは50%超、特にはしご車に限れば約95%を誇る。またバキュームカーについても、約85%と圧倒的な強さを持つ。

そんなモリタが2000年に新たなビジネスとして始めたのが訪問入浴車「湯の香」の製造販売だった。超高齢化社会に入り、介護サービス従事者の人に入浴の負担を軽減させ、安心して作業ができることをコンセプトに開発したわけだ。

今回披露した訪問入浴車は日産自動車の『NV200バネット』を改造したもので、現在、来年夏の発売に向けて詳細を詰めているという。その特長はなんといっても作業のしやすさにある。浴槽をクルマから出して入浴できるようになるまで3分もかからずに完了した。浴槽も約19kgと軽量化し、取り出す負担を軽減させた。

また、30mのホースリールは引き出し装置を装着し、ワンタッチでロック、解除ができ、ネジを緩めれば取り外しも可能となっている。しかも、後部のハッチはハーフロック機能を装備しているので、介護中に後部ハッチを施錠したまま送湯することができる。

「価格についてはまだ未定だが、500万〜600万円になるのではないか。まだ作り込んでいく必要がある」と同社関係者は話す。現在、訪問入浴車の市場は年間400台ほどで、同社はそのうち約100台を販売する。

一方、泡シャワーのデモンストレーションでは驚いた来場者が少なくなかった。というのも、シャワーのノズルから出たお湯が手などに当たると、途端に細かい泡に変わったからだ。同社関係者によると、消防車で使われている泡で火を消す技術を応用して開発したもので、他社ではなかなか真似のできないものだという。

お湯、ボディソープ、空気をコンプレッサーで一緒に送り込んでおり、細かい泡を綺麗に出すのに苦労したそうだ。肌に優しく、感触がいいことから美容業界からも注目されているとのこと。

「今年春にクラウドファンディングを利用して100台限定で販売したところ、2週間で売り切れてしまった。現在、いろいろなところから引き合いがきている」(同社関係者)という。

これから訪問入浴を必要とする人がますます増えていくので、同社の訪問入浴車と泡シャワーが活躍する場が増えていくのは間違いないだろう。

モリタエコノスのブース《撮影 山田清志》 モリタエコノスの訪問入浴車「湯の香」《撮影 山田清志》 大人2人で3分もかからずに浴槽を組み立てることができる《撮影 山田清志》 完成した浴槽《撮影 山田清志》