世界第2位のサプライヤーとなったデンソーのブース

日本を代表する部品メーカーのデンソーは9月11日、ドイツ・フランクフルトで開催中の「IAA2019(フランクフルトモーターショー)」に出展し、同社ブースにおいてトークセッション形式の記者会見を開催。世界第2位となったデンソーの欧州市場での取り組みについて説明した。

◆急速に進む電動化に対し得意のヒートポンプ技術を活用して挑む

記者会見には、欧州地域CEOでデンソーインターナショナルヨーロッパ社長の佐藤久彰氏、デンソー・サーマル・システムズR&Dのディレクターであるマッテオ・ビリア氏、デンソー執行職で北米・欧州技術開発担当する松ヶ谷和沖氏の3名が登壇。司会進行を務めたのは1999年にフォーミュラ・ニッポンでチャンピオンを経験し、今もなお現役でFIA WTCRで活躍するトム・コロネル選手。デンソーのブランドアンバサダーも務める。

コロネル選手は冒頭、デンソーが世界中で使われているQRコードを25年前に開発したメーカーであることを紹介し、今や売上規模で世界第2位へと成長した自動車部品メーカーであることを紹介。その後、登壇した3名が事業に関する質問に答える形でセッションは進められた。

その中で佐藤氏は、「自動車業界が大きく変わろうとしている今、デンソーの目標は新たなモビリティ社会への貢献を最大限に高めることにある。そのために成長が持続できるようあらゆる技術を導入していく。コネクテッド、自動化、共有、電化モビリティへのパラダイムシフトの中で、デンソーは快適さと利便性を開発の最も重要な分野と考えており、デンソーが熱管理を最も重要な分野の1つとしているのはこれが理由だ」と語り、「デンソーが持つヒートポンプおよび熱管理技術は、自動車の電動化が進む中で快適性、範囲、および環境パフォーマンスに大きな影響を与える」と述べた。

それを受けてビリア氏は「デンソーのヒートポンプを活用することで車内を効率よく温めたり冷やすことができるようになる。業界が電動化と自動運転に移行する中でユーザーは利便性と快適性をさらに重視するようになるわけで、その意味でもデンソーのヒートポンプ技術が自動車の電動化を左右する鍵となっていく。デンソーはこの電動化に向けたソリューションに十分対応できる体制を整えている」と述べた。

一方で松ヶ谷氏は出展したパートナー企業との関係性に言及。「デンソーは顧客である自動車メーカーのニーズに対応できる革新的なリソースを十分に準備しているサプライヤーだ。さらにそのリソースを高めるために多くのスタートアップ企業ともパートナーを組んでいる。中でも今回出展の「MaaS」は、鉄道やバス、タクシーなどの共通決済インフラを切れ目なく利用できるサービスの提供を目指す企業。同社からはサービス業としてのノウハウを学びたい」とした。

また、今回の出展では、オランダ大学の学生が開発した完全自律型ドライバーレスで走行できるレーシングカーも会場内に出展。大学の研究開発支援にも熱心であるデンソーの姿を披露していた。

◆より高度な新分野への挑戦を5つのパートナーと共に手掛けていく

「MAAS(Mobility As A Service)」は環境に優しい交通の代替手段を提供するフィンランドの企業。あらゆる種類の移動を一つの直感的なモバイルアプリにまとめ、様々なプロバイダーの輸送オプションをシームレスに組み合わせ、旅行計画から支払いまですべてを処理することができる。自家用車を所有することから離れ、ルート計画、駐車、車のメンテナンスに関する心配は過去のものとなるわけだ。デンソーは、このパートナーシップを通じて、輸送サービスにおけるユーザーの使い方に関する貴重な動向を得るメリットがあるという。

「Ridecell」は、カーシェアリングとライドヘイリングを仲介する“イネーブラー”で、デンソーとのコラボレーションによりカーシェアリングおよび乗車サービスをより便利にすることを目的とする。具体的には、Ridecellの車両フリートソフトウェアプラットフォームと、コネクテッドビークル向けに設計されたDENSO製品およびテクノロジーを組み合わせることで相乗効果が生まれることを狙っている。

「Bond Mobility」は、スイスでドックレスの電動自転車シェアスキームを運営する会社で、目的地付近に着いて利用するラストワンマイル向けの都市マイクロモビリティサービスを提供する。デンソーではMaaSでの利用をよりスムーズかつスピーディに利用できる環境を構築し、同時に電動化によってCO2排出量の大幅低減と交通渋滞の削減を目指す。

「Canatu」は、3D形状に展開できるタッチ・センサー用フィルムやヒーターの開発・製造するフィンランドの会社。自動運転で欠かせないセンサーは、天候や気温などに左右されずに安定して動作することが求められるが、たとえば霧の中を自動運転車両が走行してセンサー表面に水滴がたくさん付着しても安定動作は欠かせない。同社はこうした状況を防ぐことに長けたセンサー用フィルムやヒーターを開発。現状ではまだコンセプトの段階ではあるが、自動運転車のセンサー用ヒーターの業界標準となることを目指す。

「Joled」は、クルマのコックピットでヒューマンマシンインターフェイス(HMI)に使用される印刷方式と呼ばれる有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイの開発メーカー。現状で使われることが多いTFT方式などよりも高いコントラスト比を実現しており、ディスプレイ上でより色彩豊かな表現も可能になる。加えて、誰にとっても安全かつ効率的で、未来に向けてよりスマートな新モビリティを作り出すことが可能になる。デンソーではこの実現によってHMIの進歩を加速させていきたいとする。

デンソーブースでの記者会見はブランドアンバサダーであるトム・コロネル選手(右端)の司会で進められた 欧州地域CEOでデンソーインターナショナルヨーロッパ社長の佐藤久彰氏 デンソー・サーマル・システムズR&Dのディレクターであるマッテオ・ビリア氏 デンソー執行職で北米・欧州技術開発担当する松ヶ谷和沖氏 オランダ大学の学生が開発した完全自律型ドライバーレスで走行できるレーシングカーも会場内に出展 フロントにはベロダイン製LiDARが装備されていた。 デンソーが提供する部品を一望できるデモ機 印刷方式のOLEDを出展した「JOLED」の展示 環境に優しい代替手段を提供する「MaaS」の展示 タッチ・センサー用フィルムやヒーターの開発・製造するフィンランドの「Canatu」