フォルクスワーゲン ID. R(フランクフルトモーターショー2019)《photo by VW》

フォルクスワーゲンは、フランクフルトモーターショー2019(Frankfurt Motor Show)に、EVレーシングカーの『ID. R』(Volkswagen ID. R)の最新仕様を出展した。ドイツ・ニュルブルクリンク北コースにおいて、EVの最速記録を打ち立てたモデルだ。

◆ツインモーターは最大出力680hp

フォルクスワーゲンは2018年に、1987年以来、31年ぶりにパイクスピーク国際ヒルクライムにワークス体制で参戦した。そのために開発した『ID. Rパイクスピーク』には、モーターを2個搭載し、最大出力680hp、最大トルク66.3kgmを引き出す。カーボンファイバー製のボディは、車両重量が1100kg以下。軽量ボディと高性能モーターの組み合わせが、0〜100km/h加速2.25秒の性能を備える。

ID. Rパイクスピークには、市販EV同様、リチウムイオンバッテリーを搭載する。バッテリーセルには非常に高い性能を求められた。電力密度は、高電圧を発生する際のシステムで重要な要素になるためだ。市販車とは異なり、モータースポーツでの技術目標は航続ではなく、パイクスピークの頂上を目指すために可能な限り最大の出力を発生することにあった。

必要とされる電気エネルギーの約20%は、パイクスピークのおよそ20kmの走行中に生み出される。ブレーキング時に発電機として作動する電気モーターが、制動エネルギーの一部を電気に変換して、バッテリーに供給する。

このID. Rパイクスピークがパイクスピーク2018の決勝レースにおいて、ロマン・デュマ選手のドライブにより、初めて8分を切る7分57秒148の新記録で優勝した。2013年、セバスチャン・ローブ選手がプジョー『208 T16 パイクスピーク』で打ち立てた8分13秒878のコースレコードを、16秒以上短縮した。また、2016年にリース・ミレン選手が打ち立てたEVによる最速記録、8分57秒118を、1分近く短縮している。

◆ニュルの記録を40秒以上短縮する新記録

ID. Rパイクスピークの次なる挑戦が、ドイツ・ニュルブルクリンク北コースにおけるEV最速記録だ。そのために開発されたのがID. R。中国上海に本拠を置くEVメーカー、NIOのEVスーパーカー『NIO EP9』が2017年に打ち立てた6分45秒900の更新を目指した。

ID. Rは、ID. Rパイクスピークの進化バージョンだ。ヒルクライムからサーキットへ、走行場所が変わるのに伴い、主にエアロダイナミクス性能を再チューニングした。パイクスピークでは、最大のダウンフォースを得ることに主眼を置いていた。

具体的には、平均車速180km/h以上、最高速270km/h以上に達するニュルブルクリンクに合わせて、F1マシンの「DRS」(抗力減少システム)を導入した新しい空力パッケージを開発した。さらに、電動パワートレインのエネルギー管理を最適化するとともに、2つの電気モーターの出力制御とブレーキ時のエネルギー回収の制御を見直した。

このID. Rがドイツ・ニュルブルクリンク北コースにおいて、タイムアタックを実施した。再び、ロマン・デュマ選手のドライブにより、6分05秒336のラップタイムを計測し、NIO EP9の6分45秒900を40秒以上短縮し、ID. Rがニュルブルクリンク最速EVの称号を獲得している。

◆市販EVのID.3ともに電動化をアピール

フォルクスワーゲンは、フランクフルトモーターショー2019において、新世代EVシリーズ「I.D.」ファミリーの市販車第一弾となる『ID.3』を初公開した。レーシングカーのID. Rも、I.D.ファミリーの一員であり、フォルクスワーゲンの電動化への取り組みをアピールする目的で、フランクフルトモーターショー2019への出展となった。

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