関西ペイント グローバルアドバンスカラー2019 セルフセントリック《撮影  内田俊一》

関西ペイントは自動車市場向けのグローバルカラートレンドの予測、『グローバルアドバンスカラー2019』を発表した。

 ◆セルフセントリック、自己中心的がトレンド
 ◆マイクロナイゼーション…ホワイトやグレー、ブラックを新しい見せ方で
 ◆タイムトラベル…ダークカラーを中心に時空を超えた空間に思いを馳せる
 ◆ナチュラル…自然由来の美しさ
 ◆素敵なカラーが街にあふれる未来を

◆セルフセントリック、自己中心的がトレンド

このアドバンスカラーの開発は、カラートレンドの調査とその解析からスタートする。世界各国からカラートレンド情報を持ち寄り、最新のトレンドを象徴するコンセプトを探りながら、同社の最新の塗色開発技術を盛り込んだうえで、人の趣向やクルマの形状による色の見え方などを加味し作成される。

本年度のコンセプトは“セルフセントリック〜自己中心的”だ。技術は進化し、快適で便利な生活は世界中で進歩している。現在の技術の進化はよりスピードを増し、以前は実現不可能だったことも実現出来るようになった。その技術の進化は我々がもっと自由に、もっと自己中心的に生きることを可能にするのだ。このコンセプトをもとに3つの視点で塗色が提案された。

◆マイクロナイゼーション…ホワイトやグレー、ブラックを新しい見せ方で

ひとつめのテーマは“マイクロナイゼーション”。SNSが世界中で全盛の中、あえて一人で過ごすことを楽しんだり、グローバル化が進む中、自国のオリジナリティや特徴を楽しむ動きに注目したテーマだ。

その背景となる社会動向に目を向けると、中国では一人暮らしをする青年が6000万人近くいるというデータがある。その特徴は親からの干渉を避けるだけでなく、友人とも街に出かけず、一人でショッピングや映画を見たりする傾向が見られる。また、インドの若者の間では、人が集まる場所でもあえてイヤホンを利用し自分の聴きたい音楽や、会話をしたい人とだけ会話をする傾向にあるという。また、中国では多くの人々が結婚式で着る伝統衣装を日常着として楽しみ、中国の伝統文化を見直す動きも見られる。

こういった社会背景を踏まえ、ここではベーシックカラーの新しい見え方に挑戦した塗色、従来のホワイトやブラック、グレーとは一味違うカラーバリエーションとなっている。「近年のモーターショーや生産台数を見ても、世界的にホワイトパールが増加。EVや自動運転化が進む中で、環境訴求や技術革新を表す色としてホワイトは今後も重要な色と我々は捉えている」とコメントするのは、関西ペイントR&D本部CD研究所第1研究部カラーデザイナーの小野郁美氏だ。

ここでのリコメンドカラー、“フォルムテックグレー”について小野氏は、「次世代の方向性を示すコンセプトカーの最近の傾向は、曲線の多い複雑な形状が増加している。これは、低燃費を目的に空気抵抗を抑え、割と緩やかな面を持つようになったからだ」とその傾向を分析。そこで提案されたのが、滑らかな面変化をさらに魅力的に見せることが出来るグレーだ。「暗く見える面積を増やし、ハイライトの面積を少し細くすることでクルマのボディ形状により、メリハリを与えることが出来る。関西ペイントの研究と技術力が特に発揮されたお勧めの色だ。我々としても今後、形状による色の見え方というのも研究を今後も進めていきたい」とコメント。

そのほか、バーチャル空間の花嫁をイメージした、ホワイトが持つ清潔感といったものを残しながら、気分が高揚するような見る角度によって色変化するバーチャルブライトや、ブラックの新しい表現として、一見何の変哲もないベーシックなブラックカラーは、光を当てると豊かな色味のキラキラとした微粒子感が確認出来る。「これは本質を有するものという意味の曼荼羅をイメージした」と小野氏。今後、「自動車のボディカラーは、シェアカーなどの公共性と、マイカーにおける趣向性が求められる。こういったブラックは、公共性と嗜好性を併せ持つので、そういったクルマに向けた新しい色の見え方というものに挑戦した」と述べる。

◆タイムトラベル…ダークカラーを中心に時空を超えた空間に思いを馳せる

次のテーマは“タイムトラベル”だ。過去や未来をより身近に感じる動きに注目。中国では亡くなった人を冷凍保存し、将来新たな技術によって細胞レベルで生き返らせることに望みを賭けたプロジェクトが進められている。また日本では30年ほど前に姿を消したカセットテープの人気が復活。昔聞いていたカセットテープを高解像度の音質で聴くことが出来る機械も登場した。つまり最高の音質で昔の音楽を聴くことが出来るのだ。また、アラブ首長国連邦はMARS2117と呼ばれるプロジェクトを設立。2117年までに火星に都市やコミュニティを建設し、人類を移住させる火星移住計画を推進している。

このような社会背景を踏まえ、時空を超えた空間に思いを馳せることが出来る塗色、過去や未来を象徴するようなモチーフを、ダークカラー域を中心に揃えたカラーバリエーションで揃えられた。

リコメンドカラー、MARS/火星は、関西ペイントの遮熱機能、アイスレイを用いたダークブラウンだ。通常の同じ意匠よりも熱くならない技術を用い作成。「ダークカラーは、暑い国では特に敬遠されがちだ。しかし、アイスレイを用いると、室内の温度上昇を軽減することが見込まれる。そこで、移住計画が進み、将来より身近になるといわれている火星をモチーフに作成した」と小野氏は説明。こういった「赤みのあるダークブラウンは、高級感もあるので日本でも特に人気のカラー。そういった人気のカラーに遮熱機能を持つ付加価値のあるボディカラーとしてお勧めしたい」と話す。

また、アンティークなカメオブローチをイメージし、凛とした気品をキメの細いパールを用いてスムースな質感にすることで表現した“ノーブルレディ”は、「局面を滑らかに見せることが出来るので、空気抵抗を考慮した流線型のクルマも魅力的に演出出来るカラー。このやや赤みのブルーは、世界のモーターショーでも今注目されている色域でもある」という。

そのほか流星をイメージしたメテオリックブルーや、未知なる宇宙空間、NASAが捉えた渦巻銀河をイメージした、“ミルキーウェイ”など「パープル系のカラーでは、高級感の中にも遊び心を持った色としてアジアで非常に人気のある色だ」とした。

◆ナチュラル…自然由来の美しさ

最後は天然由来や自然のありのままの美しさや価値を見直し、あえて自然回帰に進む兆候に注目したテーマ、“ナチュラル”だ。

食品の世界では、ナチュラルカラーリングという言葉が注目され、天然カラーで鮮やかな色を表現している食品が多く見られるようになっている。インドでは多くの起業家や成功者たちが年齢とともに増える白髪を、人生の王冠と捉え受け入れる動きがある。著名な映画女優もグレーヘアをファッションの一部として楽しんでいるのが見受けられる。そういった背景を踏まえ、ここでは自然由来の美しさや自然の経過を表現し、その鮮やかさや表情を追求した塗色が提案された。

ここでのリコメンドカラーは“アントシニアン”だ。花や果実の鮮やかな色の素である天然色素のアントシアニンをイメージし、「未知なるパワーを今までにない鮮やかさと立体感で表現した」という。

これは関西ペイントが保有している国内外の自動車の外板色のデータベースにより、マゼンタ領域でボディカラーをハイライトが当たっている明るさと鮮やかさと、光が当たらない部分の鮮やかさを解析。その結果、「このカラーはハイライトの鮮やかさと立体感の理想的なバランスを保つマゼンタカラーだ。見るだけで元気になったり官能的な色気を持つお勧めしたいカラーだ」と話す。

そのほかにイタリアのカプリ島の海をイメージしたカラーや、ライトアップされ生き生きした水草の様子を鮮やかさと深みを重視して表現したネイチャーアクアリウム、自然由来のエネルギーを感じる鮮やかなオレンジなどが提案された。

◆素敵なカラーが街にあふれる未来を

このトレンドカラー予測は今から20年ほど前からアドバンスカラーとして自動車業界のクライアントに向けて個別に展開。「これまであまり人目に触れるチャンスがなかったが、これはクライアントを陰で支えるスタイルを取っていたからだ」と話すのは同社CD研究所第1研究部部長の藤枝宗氏だ。

しかし昨今情報発信が求められるようになったことから、「自ら行動してカラートレンドを作っていくことこそが使命。微力ながらも我々が信念を持って魅力あるカラーや、トレンドカラーを発信していくことで、素敵なカラーが街中にあふれる未来を創造していきたい」と将来を語った。

関西ペイント グローバルアドバンスカラー2019 マイクロナイゼーション《撮影  内田俊一》 関西ペイント グローバルアドバンスカラー2019 フォルムテックグレー《撮影  内田俊一》 関西ペイント グローバルアドバンスカラー2019 タイムトラベル《撮影  内田俊一》 関西ペイント グローバルアドバンスカラー2019 MARS《撮影  内田俊一》 関西ペイント グローバルアドバンスカラー2019 ナチュラル《撮影  内田俊一》 関西ペイント グローバルアドバンスカラー2019 アントシニアン《撮影  内田俊一》 関西ペイント グローバルアドバンスカラー2019《撮影  内田俊一》 関西ペイント グローバルアドバンスカラー2019《撮影  内田俊一》 関西ペイント グローバルアドバンスカラー2019《撮影  内田俊一》