触感や温度をグローブを介して、遠隔地で共有できる「3原触モジュール」のデモ《撮影 会田肇》

オイルシールメーカーであるNOKの隣にはグループ会社「日本メクトロン」がブースを出展。そのブースででもっとも注目されたのが、「3原触モジュール」を使った実演デモだ。

日本メクトロンはFPC(フレキシブルサーキット)を手掛けるメーカーで、極めて薄く自在に曲げられる基板として、その特徴が分かる製品群を数多く披露していた。FPCは車載機器にとどまらず、数多くの家電製品にも使われており、その意味ではすでに確立した技術と言ってもいい。日本メクトロンはその分野の大手メーカーとして知られる。

3原触モジュールは、手袋の指先に当たる部分に、振動と温度、電気刺激の3つの触感提示手段を世界で初めて搭載した製品。会場では3原触モジュールを組み込んだ2つのグローブを使い、一方のグローブが受けた触感や温度をもう一方のグローブに伝えてその感覚を共有できるようにしていた。

会場でその体験をしてみたところ、実演してくれた女性が何かを持つとその感覚が細かな振動とピリピリとした触感を通して伝えてきた。そのため、実際に手にしたということが感じ取ることはできる。また、熱めのコーヒー缶を手にした時は本当にその熱が伝わってきてようで、熱いものがあまり持てない筆者はつい「缶コーヒー置いて〜」と叫んでしまった。

この感覚をデータとして展開すれば、いつでもその触感を再現することも可能になるのもメリットとなる。利用用途としては「ゲーム/VR」「ロボット」「モバイル/ウェアラブル」等を想定。医療用途としては乳がんの触診に用いることもプランに入っているという。

ブース内では同社が主力とするFPCを数多く展示。中でも圧巻だったのは、LEDヘッドライトの光源一つひとつにつながっているFPCの存在だ。最近のヘッドライトはLED化によって立体的な造りを実現できるようになったが、それに大きく貢献しているのがFPCというわけだ。

他にもシフトレバー部のギヤ選択スイッチやスマートミラーの基板と他の回路ををつなぐ部分、さらにはスライドドアに使う基板などに使われる様々なFPCを見ることができた。改めてその存在を知ったのはヒーター機能を持つFPCで、これはヒーターミラーやワイパーなどに使うほか、最近はADAS用カメラを取り付けたガラス面にこれを貼り付ける事例も増えているという。

FPCはワイヤーハーネスに比べて大幅な軽量化が達成できるということで採用率は着実に上がってきているという。コスト面での課題はあるとのことだが、電動化の流れを受けて将来的にいえば成長が見込めるのは間違いない。

「3原触モジュール」の解説《撮影 会田肇》 FPCは複雑なデザインのLEDヘッドライトにも柔軟に対応できる《撮影 会田肇》 スマートミラーに使った例《撮影 会田肇》 曲げを与えると電気が発生する素材をFPCに応用することで、着座センサーとしても使える《撮影 会田肇》 押して曲がる量に応じて電圧が変化。この特性を使ってバリアブルなスイッチとしても活用できる《撮影 会田肇》 ヒーター機能を備えたFPCの解説《撮影 会田肇》 ADAS用カメラの前に黒利などを除去するヒーターFPC。欧州車で採用実績があるという《撮影 会田肇》 ワイパーやミラーにもヒーターFPCは組み込める《撮影 会田肇》 ワイヤーに比べて圧倒的に重量を軽減できるのがFPCの良いところ《撮影 会田肇》