三菱 アウトランダーPHEV《撮影 青山尚暉》

迫る電動化、最適なドッグフレンドリーカーは?
昨今、世界的にクルマの電動化が押し進められています。メーカーによっては2020年、2030年までに、ほとんどの車種を電動化する! といった目標を掲げ、宣言しているほど。



もちろん、電動化とは100%ピュアEV(電気自動車)だけを差しているわけではありません。EVだけでなく、HV(ハイブリッド)やPHV/PHEV(プラグインハイブリッド)も含まれます。




それを先取りして電動車に乗り換えることは、愛犬とのドライブでも好都合。電動車は走りが滑らかで、なおかつ静か。車内でどこかにつかまれず、聴覚に優れた犬にはうってつけです。電動車は低重心のため、カーブやレーンチェンジ時などでの車体の姿勢変化が少なく、車内の静粛性も高いので、ドライブ中の愛犬のストレスを劇的に低減。特にEVの走行性能はドッグフレンドリーカーとして理想的と言えるのです。




ピュアEVが理想的だが…
つい最近試乗したフル電動車のEV、ジャガー『I-PACE』は、動力源がただ静かなだけでなく、高速走行中の風切り音、ロードノイズもないに等しい車でした。耳に届くのはそよそよしたエアコンの音がほとんど。

これぐらい静かだと、犬の耳にもやさしく、また、床下にびっしりとリチウムイオンバッテリーが敷きつめられているため、驚異的な低重心。素晴らしく安定して走ってくれるのです。I-PACEはSUVタイプですから、なんとなればラゲッジルームに愛犬を乗せることも可能。ある意味、理想的なドッグフレンドリーカーだったのです。





ただし、ピュアEVとHV、PHVでは、実はドッグフレンドリー度に差が付くのも事実です。そのポイントがピュアEVの充電事情。航続距離が長く、無充電でドライブを完結できればまったく問題ないのですが、例えば、東京からドッグフレンドリーな観光地、ペットと泊まれる宿、食事処、観光スポットが充実した軽井沢や那須、伊豆高原あたりに出掛けるとしたら、東京駅起点での片道走行距離は軽井沢で175km、那須高原で190km、伊豆高原で140kmぐらいになります。その片道、または往復を余裕でまかなえるEVとなれば、日産『リーフe+』、それこそテスラや、極めてドッグフレンドリーなEVのSUVだと思えるジャガーI-PACEなど、相当高価なEVを買うしかありません。




それでも、心配性のボクとしては、遠路、軽井沢、那須高原へのドライブだと、「なにがあるか、起こるか分からない」と、出発したときからバッテリー残量が気になり始めます。山道を走り、夏場に暑がりの愛犬のためにエアコンをガンガン効かせたとすれば、なおさらでしょう。




愛犬がいると充電も一苦労
無論、充電しつつドライブをのんびり楽しめばいいのですが、実際、愛犬連れとなると、それがなかなか難しい場面もあるのです。人間だけなら途中SAなどで充電している間にランチや買い物、というのが効率良く理想ではあるのですが(充電時間内で)。東名・足柄SA(上り)のように、充電スポットとドッグランが隣接しているところもめったにありません。



そして、いつも晴れていて、快適な気候ばかりとは限りません。SAのほとんどの飲食施設にはペットは入れず、ランチするにしても、外のベンチでいただくことになるのですが、雨の日、寒い日、暑い日だと、我慢大会です。充電中の車内に愛犬だけ残して食事に行くなど、もってのほか。できれば往路、復路ともに充電なしで移動したいと思ってしまいます。



ならば、EV走行可能距離に対して余裕が持てる距離にある、充電設備のある愛犬同伴型リゾートホテルを目指せばいいのです。そこで、以前、ピュアEVで軽井沢にドライブしたときの宿泊先は、200Vの充電設備が駐車スペースにある「アートホテル・ドッグレッグ」に決めました。

往路の走行距離は約175kmで、フル充電して出発後、充電心配性のボクでもなんとか無充電で到着。そして、ホテルの駐車場の一角で充電。充電のために時間をつぶす必要のない、好条件のEVドライブを満喫しました。



付け加えれば、軽井沢で多くの人(愛犬家)が訪れるであろう、愛犬同伴可能な「軽井沢ショッピングプラザ」には、駐車場の一角に数基の充電設備があります。そこで充電している間、軽井沢での大きな楽しみと言える!? ショッピングをし、DOG DEPTなどで、愛犬といっしょに食事をすることもできるのですから、やっぱり軽井沢は犬にもEVにもやさしい、日本有数の観光地、避暑地ですよね。




愛犬同伴スポットに充電設備があるとも限らない
また、クルマ好きのドライブルートとして最高の箱根であれば、充電設備のある愛犬同伴型リゾートホテルとして「箱根ハイランドホテル ドッグフレンドリールーム」があります。

御殿場ICを降りたあとは、EVにとって過酷な山道の登りが延々と続くため、御殿場IC手前の足柄SAで充電できれば充電。箱根のきれいで澄んだ空気を汚さないモータードライブが安心してできるというわけです。そしてホテルの滞在中に効率よく充電しておけばいい。チェックアウト後も、安心して出発できるでしょう。




ですが、目的地のホテル、ショッピングセンターすべてに充電設備があるわけではありません。愛犬同伴型リゾートホテルに限定すれば、ほぼないに等しいのです。繰り返しますが、ピュアEVは愛犬を乗せるのに最高の走行性能、ドッグフレンドリーカーとしての資質の持ち主であることは間違いありません。が、全国に約1万3500ヶ所もの充電スポットがあるのを分かっていても、充電心配性のボクのような人間は、愛犬連れになると途端にドライブルート(充電スポットを意識した)や目的地が制限されてしまいがちなのです。




充電心配性、そんなあなたに「PHV」
愛犬のために電動車を選ぶ。それは大正解です。車種によっては車内外で電化製品が使える100V/1500Wコンセントも備わり、ドライブ先のお気に入りの場所が「どこでもドッグカフェ」になり、災害時には電気が使える「愛犬同伴避難所」になりうるのですから。



が、もし、充電環境によって目的地を制限されたくない、自分は極度の充電心配性…というなら、電動車でもエンジンを積んだPHVを選ぶのも手でしょう。HVと違い、車種は極端に限られるものの、電動車ならではの滑らかかつ静かで、床下バッテリー積載による低重心感覚ある愛犬にやさしい安定した走行性能と、電気がなくなってもクリーンなエンジンで走れる「安心」が同時に手に入るのです。EV走行距離はピュアEVに比べてずっと短くはなるものの、ガソリンが底をつくまで走行可能。ボクのような充電心配性でも安心です。





個人的には、より大型犬を含む愛犬を乗せやすい、ミニバンやステーションワゴンの電動車が(手の届く値段で!)、幅広く選べる時代になることを願っているところです。もちろん、愛犬同伴型リゾートホテル、愛犬同伴可能スポットの充電設備の設置拡充も!

(※なお、使用している写真は現行型と異なる場合があります。)



青山尚暉|モータージャーナリスト/ドックライフプロデューサー
自動車専門誌の編集者を経て、フリーのモータージャーナリストに。自動車専門誌をはじめ、一般誌、ウェブサイト等に寄稿。自作測定器による1車30項目以上におよぶパッケージングデータの蓄積は膨大。ペット(犬)、海外旅行関連の書籍も手がけ、また、愛犬とのカーライフに関するテレビ番組、ラジオ番組、イベントに出演。愛犬との快適・安心自動車生活を提案するドッグライフプロデューサーとしての活動、自動車用ペットアクセサリーの企画・開発も行っている。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

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