三菱 デリカD:5 新型《撮影 中野英幸》

最近の日本車メーカーは、海外を重視して商品を開発するから、日本国内で売られるクルマの設計が古くなった。『デリカD:5』は2007年1月の発売だから、12年以上を経過する。

しかし売れ行きは堅調だ。ミニバンなのに悪路走破力はSUV並みに高く、ミニバンでは唯一クリーンディーゼルターボも搭載する。全長が4800mm以下の車種では、居住性も最も優れている。ほかの車種とは違う特徴が多いので、売れ行きが保たれている。そこでデリカD:5の約90%を占めるクリーンディーゼルターボ搭載車が、大幅な改良を受けて装いも一新させた。

存在感を強めたフロントマスクが注目されるが、2.2リットルクリーンディーゼルターボも改良を受けて、実用回転域の駆動力を高めた。1300回転以下では落ち込むが、それ以上の領域はATも8速になって加速が滑らかだ。ノイズも小さく抑えた。

さらに操舵に対する反応も、鈍さが抑えられて自然な印象になり、峠道を走っても以前に比べて旋回軌跡を拡大させにくい。乗り心地は少し硬めだが、粗さはなく、安定性と走りの質を向上させた。緊急自動ブレーキも『エクリプスクロス』と同じ仕様が加わり、進化の度合いはフルモデルチェンジ並みだ。

ただしステアリングの位置を前後に調節するテレスコピック機能は採用されず、3列目シートを跳ね上げる時にはかなり体力を要する。こういった使い勝手の改善は今後の課題だが、少なくとも基本性能は大幅に向上した。

デリカD:5のユーザーには、何台も乗り継ぐファンが多い。今回のマイナーチェンジは、大いに歓迎されるだろう。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★
オススメ度:★★★★

渡辺陽一郎|カーライフ・ジャーナリスト
1961年に生まれ、1985年に自動車雑誌を扱う出版社に入社。編集者として購入ガイド誌、4WD誌、キャンピングカー誌などを手掛け、10年ほど編集長を務めた後、2001年にフリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向した。「読者の皆様に怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も大切と考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を心掛けている。

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