ホンダの八郷隆弘社長《撮影 山田清志》

ホンダの八郷隆弘社長は2月19日、東京・南青山の本社で急遽会見を開き、二輪車・四輪車・パワープロダクツの運営体制とクローバル四輪生産体制の変更を行い、英国工場での生産を2021年中に終了すると発表した。

二輪車事業では、従来の商品開発体制をさらに進化させ、営業・生産・開発・購買の各部門を超えて、より協調と連携ができるように、二輪車事業本部と二輪R&Dセンターを組織として一体化させる。これによって、新商品の企画構想、開発、生産立ち上げ、量産を一貫して行い、商品魅力のみならず、コスト、品質、開発スピードを高め、グローバルでの競争力を確保する。

四輪車事業では、事業環境の変化にスピーディ、柔軟に対応するため、体表取締役副社長が四輪事業本部長を担当し、即断・即決できる体制にする。併せて研究所では、「先進技術研究」と「商品開発」の組織を分け、それぞれの領域に集中できる運営体制に再編し、商品開発を担う「オートモービルセンター」を新設する。

そして、グローバルでの生産体制の変更では、英国の四輪生産工場とトルコの四輪生産工場での生産を2021年中に終了する。「現在、電動化の加速を見据え、グローバルにおける『生産配置と生産能力の適正化』という方針で、四輪生産体制の見直しを進めている。欧州は、電動車ラインアップの強化が必要となる中、欧州域内での電動車生産は競争力などの観点で難しいと判断した」と八郷社長は説明する。

質疑応答では、やはり英国での生産終了に質問が集中した。特にブレグジット絡みのものが相次いだ。それに対し、八郷社長は「ブレグジットのことは考慮していない」と何度も強調し、「次期『シビック』をどこで生産するか模索した結果だ。英国生産の55%が北米向けのシビックで、今後の電動化加速や北米欧州の環境規制の違いなどを踏まえ、北米向けは北米でつくると決めた」と話す。

ホンダにとって最大の課題は四輪車事業の収益力アップである。なにしろ四輪車事業の営業利益率が5%を超えたのは過去10年一度もなく、直近の数字は3.1%と、8%を超えるトヨタ自動車の半分以下だ。

そのため、日本では狭山工場(埼玉県)を閉鎖する方針を示し、ブラジルでも2つの四輪工場を一本化するなど生産体制の整理を進めてきた。残された課題が赤字体質の英国工場だったわけだ。ただ、八郷社長はこうも強調する。

「欧州市場からの撤退は考えていない。欧州圏内は環境規制が近い中国と商品群を共有する。欧州向けの電動車などは、日本・中国を軸に供給し、欧州でのブランド強化に努めたい」

こうしてホンダは2025年に欧州での四輪車販売台数の3分の2を電動化するという目標を達成しようという方針だが、会見中の八郷社長は終始厳しい表情で、一切笑顔を見せることがなかった。今のホンダを象徴するような会見だった。

欧州へは中国、日本から電動車を供給する《撮影 山田清志》 ホンダ本社 (c) Getty Images ホンダ・シビック (c) Getty Images