デンソーは自動運転関連の開発拠点を東京地区へ移し、パートナーとの連携や人材確保へつなげていく《撮影 会田肇》

大手自動車部品サプライヤーのデンソーは1月24日、昨年4月に東京・品川に開設した、高度運転支援および自動運転、コネクテッド分野の研究開発を行う新オフィス『Global R&D Tokyo』を報道関係者に公開。同社の同分野へ向けた今後の取り組みを紹介した。

デンソーはこれまで愛知県刈谷市に本社を構え、ここで一括して研究部門を担っていたが、そこからADAS(先進運転支援システム)や自動運転、コネクテッドカーなどに関する部門をGlobal R&D Tokyoへ移転。今後は2020年6月、大田区・羽田空港跡地に新設される試験車両の開発棟と合わせ、この分野における同社の研究開発の拠点として成長させていく方針だ。

説明を担当したデンソーの常務役員隈部肇氏は、「(当事業所は)本社とともに研究開発拠点を総括する役割を担い、先進モビリティシステムの早期開発とOEMパートナー向けの提案を加速させる場所とするのが目的」と語り、同時に人材確保も大きな目的とし、「この分野は人材確保が熾烈だが、東京地区に進出してから従来の数倍を確保するに至った。手応えは十分ある」とした。その結果、昨年4月の開設時点で200人程度だった従事者は12月には270人へと増加。2020年代前半には東京地区全体で1000〜2000人規模にまで増やすとした。

この日はGlobal R&D Tokyoのオフィスに設置されている自動運転システムや都市における交通アクシデントを仮想評価できるシミュレータも公開された。

自動運転システムのシミュレーターは、危険運転や事故の発生をシミュレーター上で再現することができ、そこで得られたデータを蓄積することで同社が扱うEPSやエッジコンピュータなどの商品開発に役立てるのが目的。同社はこれまで北海道・網走市や自社敷地内で実証実験を行ってきたが、それを再現することは難しい。こうした実験と連携し、シミュレーターでこれらを再現することで実験の効率化へつなげていきたい考えだ。

都市における交通アクシデントを仮想評価できるシミュレータは、発生した事象に応じて速やかな対応を行い、交通の円滑化を図る方法を構築するのが狙い。この日は、走行途中でドライバーが急病を患ったために自動運転シャトルが停止。管制とシャトルが通信で連絡を取ると同時に、他のシャトルが即座に別ルートへ誘導するシミュレーションも再現して見せた。

ただ、この実現にはデンソー1社で実現できるものではなく、インフラ側や通信キャリアなど様々なパートナーとの連携が欠かせない。デンソーはじれを交通管制センターとして立ち上げ、そのプラットフォームでのイニシアチブをとっていく方針だ。

今後は研究開発を担う品川と、試験を行う羽田を連携させた先行開発の拠点としていく 2020年6月に自動運転の実証実験などに利用する羽田オフィスを開設 「Global R&D Tokyo」設置の狙い 周辺にはパートナーが数多く集中しており、それらとの連携も取りやすくなったとする 各地での実証実験も数多く繰り返されている 「Global R&D Tokyo」設置の狙いについて説明するデンソーの常務役員 隈部肇氏《撮影 会田肇》 「Global R&D Tokyo」の説明会《撮影 会田肇》 Global R&D Tokyoのオフィスに配備された実車両環境を再現する自動運転シミュレーター《撮影 会田肇》 自動運転シャトルを管制するシミュレーター。複数の台数を同時に管制した場合の対応などを評価する《撮影 会田肇》 デンソーが考える2025年の自動運転 隈部肇氏によれば、レベル4は域内で限定すれば実現は可能。一般道ではレベル2〜レベル3が2020年代に訪れるとする