ヤマハ発動機の渡部克明代表取締役副社長執行役員(左)《撮影 山田清志》

ヤマハ発動機の渡部克明代表取締役副社長執行役員は8月9日、排ガスの抜き取り検査で無効な測定を有効と処理していた問題について記者会見を行い、「悪いことをしている認識はなかった」と述べた。

二輪車メーカーの同社も四輪車メーカーと同様に、排ガスの抜き取り検査では、国が定める規則に従って検査員がアクセル、ブレーキ、ギアを操作して測定している。ただ、二輪車の場合は、燃費については届け出の必要がなく、検査を行っていない。

「7月に国土交通省から指示があって初めてこういうことをしてはいけないと知った」と渡部副社長と話し、こう付け加える。

「条件を逸脱するとブザーで知らせるようになっているが、検査員は速やかに基準内に戻せばよいと考えていた。逸脱が許される範囲が決められているという認識そのものがなかった」

許容される逸脱時間は、WMTCモードで2秒未満、二輪車モードで1秒以内ということだったが、ヤマハ発動機の場合、そんな認識がなかったため、抜き取り検査の社内基準をつくる時に速度条件の逸脱が許される範囲の項目が抜けていたという。

文字通り、認識不足だったわけだが、検証した結果、335台のうちWMTCモードで5台、二輪車モードで2台の計7台で無効とすべき測定結果を有効と処理していたものが判明した。ただ、保存されていた測定データは2016年1月9日〜18年7月12日の分だけで、それ以前については不明とのことだ。

おそらく同じような割合で不適切に処理したものがあったのではないかというのが、同社の見解だが、7台は排ガスの保安基準に適合しており、リコールなどの必要はないと考えている。

とはいうものの、再発防止策を進める必要があるのはいうまでもない。「条件の逸脱が許される範囲を作業標準に組み込み、データをチャート図にして監督者などが調べる仕組みもつくった。エラーを自動的に判定する仕組みについても検討する」と渡部副社長は説明し、検査を検査員の技量に頼り切っていたことを反省していた。