(左から)ヴィア社ビジネス開発部門バイスプレジデントのダビッド・アデルマン氏、森ビル営業推進部課長の竹田真二氏、メルセデス・ベンツ日本広報部製品広報課マネージャーの木下潤一氏《撮影 山田清志》

森ビルは8月1日、東京都内の虎ノ門ヒルズで記者会見を開き、米ライドシェア大手のヴィア社と共同でミニバンに社員が相乗りして都内を移動する実証実験を開始したと発表した。

この実証実験は「オンデマンド型シャトルサービス(Hills Via)」と名づけられ、ヴィア社が提供する予約・運航システムを利用して行われる。対象は森ビルの社員約1300人で、森ビルが料金を負担して社員が無料で乗れることにしたことによって実験が可能になった。というのも、日本では一般車両での有償の相乗りが原則禁止されているからだ。

使用されるミニバンはメルセデス・ベンツ日本が提供した『Vクラス』で、とりあえず4台からスタートする。同社の親会社ダイムラー社はオンデマンドシェアライドの実現を目指してヴィア社に出資しており、その縁もあって今回の実証実験に車両を提供した。

走行するエリアは森ビルの施設がある港区が中心で、平日の午前8時〜午後7時30分の間利用できる。森ビル社員はヴィア社がつくったアプリをスマートフォンにダウンロードし、現在地と目的地を指定する。すると、独自のアルゴリズムで同じ方向を目指す複数の乗客を把握し、途中で乗客をピックアップしながら最適な走行経路で走って行く。

試乗会では、虎ノ門ヒルズから六本木ヒルズに行く際、途中でその車に乗りたい人から連絡が入り、当初のルートを変更してその人をピックアップして六本木ヒルズに向かった。こうすることによって、効率的に人を運べ、地球環境にも優しいというわけだ。

「渋滞の解消につながっていけば、都市の魅力を高めることができる。また、相乗りすることによって、社員のコミュニケーションを活性化させることもでき、業務の効率化にもつながることを期待している」と森ビル営業推進部課長の竹田真二氏は話す。なにしろ最大6人乗ることができるので、移動中に“車内会議”も可能だからだ。ちなみにドライバーは運転手派遣会社のプロとのこと。

一方、ヴィア社ビジネス開発部門バイスプレジデントのダビッド・アデルマン氏は「われわれは世界で最も効率が良いオンデマンドでダイナミックなシャトルサービスをタクシーやバス会社、その他の交通機関などに提供したいと考えている」と話し、日本で問題になっている地方の移動の足についても何かできないかと模索しているそうだ。そのために、ヴィア社は日本で子会社を設立している。

ただ、森ビルは交通サービスに参入する気はさらさらなく、1年間の実証実験でデータを集めるだけ。そして、そこで得られた知見を既存の交通会社に提供し、豊かな都市づくりに役立てようと考えている。その裏には、住みやすい都市づくりを実現できれば、森ビルの施設の資産価値が上がるということがある。

いずれにしても、こうした新しい交通サービスが今後、どのような形で進んでいくのか要注目だ。

実証実験で使用されるメルセデス・ベンツ『Vクラス』《撮影 山田清志》 米ヴィア社がつくったスマホのアプリで予約《撮影 山田清志》 途中で乗客をピックアップする際、車内の人にルート変更を知らせる《撮影 山田清志》 森ビル営業推進部課長の竹田真二氏《撮影 山田清志》 ヴィア社ビジネス開発部門バイスプレジデントのダビッド・アデルマン氏《撮影 山田清志》