タツノの水素ディスペンサーに取り付けられていた試作品の自社製ノズル。《撮影 高根英幸》

日本でもようやく水素ステーションが3ケタに届こうかという現在、水素ステーションを構成するシステムの供給状況にも変化が出てきたようだ。FC EXPOの会場内、TATSUNOのブースを訪れると見慣れた水素ディスペンサーながら、FCVと接続するノズル部分にTATSUNOのロゴが刻まれているのが目に入った。

このノズルは確か日東工器とドイツのWEH社製しか存在しないはず。そう思ってブースの説明員に尋ねてみると……。

「はい、このノズルはようやく我が社で開発できた試作品です。まだ量産化の具体的な時期は言えませんが、ノズルも内製化を目指しています」。

そもそもタツノはガソリンの流量計から、計量器そして地下タンクなどガソリンスタンド設備を得意としてきた企業。コリオリ流量計は高圧水素にも使えることから、水素ディスペンサーも手がけている。

ブースが隣だったイワタニの水素ステーションにもタツノの水素ディスペンサーが採用されているそうだ。イワタニも水素ディスペンサーを生産していたハズ。どういうことか、尋ねてみた。

「水素ステーションを建設始めた当初は、他に生産しているところがなかったので、内製されていたところが多かったのです。イワタニさんの水素ディスペンサーにも当社のコリオリ流量計など内部の部品は当初から使われていました」。

イワタニ以外もタツノの水素ディスペンサーを採用するプラントメーカーは増えているそうだ。これによってそれぞれが得意分野に開発資源を集中させることができる。分業化を進めることで、高精度な製品のコストダウンを図る傾向にあるようだ。

しかし前述の通り、タツノも水素ディスペンサーのノズルは外製を購入していた。これまでは1個800万円近くするノズルを採用するしかなかったが、内製化することでコストは確実に圧縮できる、ということなのである。

水素充填中などノズルが車体に連結したまま、万一走り出してホースが引っ張られてしまった場合には、ジョイント部分が抜けることで高圧水素の放出を防ぐ緊急離脱カップリングという機構が組み込まれているが、こちらも内製化を目指していて、試作品を公開した。

4億円くらいかかると言われる水素ステーションの建設コストも、こうして下がっていくことになりそうだ。

水素ディスペンサーは精度や安全性はすでに十分なレベルにあるため、開発の方向性はコストダウンになっているそうだ。《撮影 高根英幸》 ホースが引っ張られた時に外れて水素の放出を防ぐ、緊急離脱カップリング。こちらも内製を目指している。《撮影 高根英幸》 コリオリ流量計も試作品を展示。これまでは2ピース構造だったものを一体化し、メーターはディスペンサー本体やアプリで確認する。《撮影 高根英幸》 タツノの工場ではトヨタL&FのFCフォークリフトが使われているそうだ。《撮影 高根英幸》