電線などを地下に埋設し、路上の電柱をなくす「無電柱化」計画が進んでいる。国土交通省は2018年度からの3か年で、新たな無電柱化1400kmを目標に掲げる。同省はこの計画について国民からの意見も求めている。

無電柱化のメリットは3つある。災害に強いこと、安全で円滑な交通が確保できること、そして景観だ。無電柱化すれば、歩道に立ちふさがる電柱がなくなる。震災後に垂れ下がった電線に注意する必要もいらない。電柱への衝突は負傷の大きな要因となるが、それもなくなる。

いいことだらけなので、ロンドンやパリは100%無電柱化だ。が、日本では東京23区でも7%しか無電柱化は進んでいない。欧米に限らずアジアに目を転じても香港100%、台北やシンガポールでも90%台で、日本は著しく無電柱化が遅れている状態だ。

そのため国は2016年12月に「無電柱化の推進に関する法律」を制定した。推進計画の策定を自治体に要望し、すばやく無電柱化を全国に拡大しようとしている。が、推進するほど深刻になるのがコスト問題だ。国交省が算出したこれまでの国内の実績では、km当たり約3億5000万円が必要だ。ただ、ロンドンやパリの無電柱化費用を試算すると、km当たり8000万円。日本国内の1/4のコストですむという。

両者のコスト格差は設置方法の違いにある。日本では地下に共同溝を埋設し、その中にケーブルを通すのが主流だった。欧米は共同溝など設置せず、ケーブルを直接地中に埋める直接埋設方式。国内ではまったく実績がない。直接埋めて大丈夫なのかという心配が生まれるかもしれないが、電柱でも心配はないわけではない。電柱には重さ900kgに及ぶ柱上変圧器が取り付けられている。これを地上に設置し、ケーブルを地下に埋設したほうが安心という考え方もある。

付け加えると、前述の無電柱化コストには、この変圧器など電気設備を地上に設置する費用などは含まれていない。共同溝方式でも直接埋設でもkm当たり約1億8000万円の上乗せとなる。無電柱化の前に立ちふさがるのは、コストという壁だ。低コストをどう実現するか。直接埋設の実証実験や、新たな工法の検討が続いている。

そんな中での3年間で1400kmという目標。無電柱化の実績は年間最も進んだ時で440kmだから、意欲的な数値だ。こうした点を含めて無電柱化をどう考えるか。国交省は3月12日までパブリックコメントを実施中だ。