スズキ・クロスビー《撮影 工藤貴宏》

●車体を支える「Aプラットフォーム」、パワートレインは特別

2017年内最後のタイミングで発表会が行われたスズキのニューカマー『Xbee(クロスビー)』。まず注目すべきは、コンパクトなハイトワゴンのクロスオーバーSUVという新しいジャンルを切り開いたことだ。

欧州で火が付いたコンパクトクロスオーバーSUVは日本でも大きなマーケットを築き上げ、今では定番ジャンルのひとつとなった。しかしコンパクトとはいえ、いずれも全長は4mを超え、スタイリング重視で後席や荷室はあまり広く確保されていないなど、ユーティリティは二の次となっていることが多い。かつてのデートカーのように、フロントシートを中心に居住性が考えられているからである。

しかしクロスビーはそれらとは一線を画する。全長は3760mmとコンパクトで、パッケージングはハイトワゴンそのもの。なかでも、コンパクトクロスオーバーとして断トツの広さを誇る後席足元スペースは、ファミリーユースにもピッタリだ。

ワクワクするようなデザインの楽しさに加え、家族での移動に便利な居住性やレジャーに出かけるのをサポートする荷室など、実用面も高い水準にあるのがクロスビーの評価すべきポイントである。

「コンパクトで楽しいSUVスタイル。みんなでもっと遠くまで遊びに行こう。……そんなふうに感じていただけるようなクルマを作りました」とスズキの四輪商品第一部でチーフエンジニアを務めた高橋正志さんは言う。

●イグニス以上スペーシア未満

そんなクロスビーの屋台骨となるのはスズキが「Aプラットフォーム」と呼ぶ、小型車用としてはもっとも小さなプラットフォームだ。日本で販売されているモデルとしては、『イグニス』や『ソリオ』に続いての採用となる。

興味深いのはイグニス、ソリオそしてクロスビーの3台は、背の高さが明確に違うことだ。イグニスはハッチバックだし、ソリオは超ハイトワゴン。クロスビーは中間となる。果たして、それらスズキの「Aセグメントモデル」と比べた時に、クロスビーの立ち位置はどうなるのだろうか?

「ソリオはクロスビーよりも室内が広く、リヤにはスライドドアを組み合わせています。実用性はクロスビーよりも高く、日常の使い勝手を重視したクルマがソリオ」というのはクロスビーのアシスタントチーフエンジニアを務めた高尾昌明さんだ。「クロスビーはユーティリティ面でも高い水準だが、ソリオに比べるとデザイン重視」と断言する。

イグニスに対しては「ハッチバックをベースにしたSUVで、キビキビとした走りを重視したモデルです。パッケージングも前席優先ですね」と三者三様のキャラクターを説明してくれた。

実用性においては「ソリオ未満イグニス以上」というのがクロスビーの立ち位置なのだ。とはいえ、一般的なコンパクトSUVに比べるとパッケージングは非常に実用的。逆に走りという視点から見ると「イグニス未満ソリオ以上」となる。

●1.0リットルターボエンジンを積む理由は?

ところで、メカニズムをチェックするとソリオやイグニスと根本的に違う部分がある。パワートレインだ。1.2リットル自然吸気エンジンにCVTを組み合わせるそれらに対し、クロスビーは1.0リットル・ターボエンジンに6速ATと大きく異なるのだ。

エンジンは1.0リットルと排気量が小さくなるものの、ターボのおかげで動力性能は1.2リットル自然吸気を超え、1.5リットル自然吸気と同程度だ。そのうえ低回転域(最大トルク発生回転数は1700〜4000rpm)から太いトルクを発生するので、加速が力強く感じるし運転しやすい。

「『もっと遠くへ遊びに行く』というコンセプトを考え、後席にも人が乗り、荷物を積んでも余裕のある動力性能を狙いました。それを踏まえた選択のひとつが1.0リットルターボエンジンです」とチーフエンジニアの高橋正志さんは言う。

エンジンは99PS/150Nmというスペック。このエンジンにマイルドハイブリッドを組み合わせたのもはじめてだし、『バレーノ』の同エンジン搭載車とは異なり、レギュラーガソリン仕様としていることもユーザーにとっては朗報だ。

もうひとつ気になるのは、トランスミッションが燃費重視のCVTではなく多段式AT(6速AT)を組み合わせたこと。これは1.0リットルのターボエンジンに合うCVTが存在しないという事情が前提にあるにせよ、今どきの国産コンパクトカーとしては珍しい選択である。

四輪パワートレイン実験部の近藤健太郎さんは「CVTよりも走りがスマートです」とATのメリットを説明。「走りを求めてのAT、と言ってもいいでしょう。だからパドルシフトを全車に標準装備しました」。確かに、このクラスでパドルシフトを全車に標準装備するのは珍しいことである。「もちろん燃費を気にするお客さんもいらっしゃるでしょうから、6速化でワイドレシオにして高速域の燃費性能を高めています」という。

スズキにとってニューカマーとなるクロスビーは、まず独自のデザインとキャラクターに注目したくなるクルマだ。しかし一般的なコンパクトクロスオーバーSUVでは考えられない高い実用性を備え、ターボエンジン+ATと走りもこだわりをみせている。「クロスオーバー」というジャンルの呼び名にふさわしい、すべての欲張りに応える1台といっていい。

スズキ・クロスビー《撮影 工藤貴宏》 スズキ・クロスビー《撮影 工藤貴宏》 スズキ・クロスビー《撮影 工藤貴宏》 スズキ・クロスビー《撮影 工藤貴宏》 スズキ・クロスビー《撮影 工藤貴宏》 スズキ・クロスビー《撮影 工藤貴宏》 スズキ・クロスビー《撮影 工藤貴宏》 スズキ・クロスビー《撮影 工藤貴宏》 スズキ・クロスビー《撮影 工藤貴宏》 スズキ・クロスビー《撮影 工藤貴宏》 スズキ・クロスビー《撮影 工藤貴宏》 スズキ・クロスビー《撮影 工藤貴宏》 スズキ・クロスビー《撮影 工藤貴宏》 スズキ・クロスビー《撮影 工藤貴宏》 スズキ・クロスビー《撮影 工藤貴宏》 スズキ・クロスビー《撮影 工藤貴宏》 スズキ・クロスビー《撮影 工藤貴宏》 スズキ・クロスビー《撮影 工藤貴宏》 スズキ・クロスビー《撮影 工藤貴宏》 スズキ・クロスビー《撮影 工藤貴宏》 スズキ・クロスビー《撮影 工藤貴宏》 スズキ・クロスビー《撮影 工藤貴宏》 スズキ・クロスビー《撮影 工藤貴宏》 スズキ・クロスビー《撮影 工藤貴宏》 スズキ・クロスビー《撮影 工藤貴宏》 スズキ・クロスビー《撮影 工藤貴宏》 スズキ・クロスビー《撮影 工藤貴宏》 スズキ・クロスビー《撮影 工藤貴宏》 スズキ・クロスビー《撮影 工藤貴宏》 スズキ・クロスビー《撮影 工藤貴宏》 スズキ・クロスビー《撮影 工藤貴宏》 スズキ・クロスビー《撮影 工藤貴宏》 スズキ・クロスビー《撮影 工藤貴宏》 スズキ・クロスビー《撮影 工藤貴宏》