
夏場はクルマにとって過酷な環境だ。特に近年は気温も異常に上がり、クルマへの負担もこれまでとは大きく異なる。そんな中、メンテナンスのポイントに挙げたいのがラジエター液(LLC)の管理だ。夏場の暑さを乗り切るためのラジエター液のメンテナンスに注目しよう。
◆冷却と凍結防止のW機能に注目クルマには定期的な交換が必要な部品が多く、特にエンジンルームを見るとエンジンオイルやブレーキフルード、ATF、パワステフルードなど、目に見える部分に定期的な交換が必要な油脂類が多いことがわかる。
多くの場合、レベルゲージやサブタンクを備え、汚れや減りなどを目視で確認できる仕組みになっている。そのため点検時にエンジンルームを見ると、かなり多くの情報が得られる。中でも今回注目したいのがラジエター液(LLC=ロングライフクーラント。一般的に「クーラント」と略される)だ。ラジエター液はエンジン(ウォータージャケット内)からラジエターへと循環し、エンジンの熱を移動させて冷却するという働きを担っている。
このように水冷エンジンの冷却において重要な役割を果たすクーラントだが、市販されているクーラントのもうひとつの大きな機能が凍結防止だ。
その仕組みを簡単に説明しよう。ラジエター液に真水を使うと、駐車時に気温が0度を下回ると凍結の恐れがあり、凍ることでラジエターやエンジン内で膨張し、最悪の場合エンジンにダメージを与える可能性がある。そこで低温でも凍らない性能を持たせたのがクーラントだ。濃度(希釈タイプやあらかじめ濃度が指定された製品もある)によって凍結温度を調整できるため、寒冷地では濃度を高めて対応する。ただしクーラントの濃度が濃すぎると冷却効率が落ちるため、夏場の冷却を考慮するなら、最低気温を想定しつつ最適な濃度を選ぶとよい。
◆経年劣化と交換時期の目安クーラントのもうひとつの重要な機能が防錆効果だ。内部の金属部品(ラジエターやウォータージャケットなど)をサビから守る働きがあり、さらに流路に汚れが付着しにくくする効果も持っている。
しかしクーラントは経年で劣化する。一般的なクーラントの交換目安は約2年で、車検ごとの交換が基本となる(超長寿命タイプのLLCもあり、4年・10万kmの製品も存在する)。クーラントの状態はリザーバタンクで確認できる。
タンクは半透明になっており、ラジエターキャップから伸びたホースの先に装着されているので比較的見つけやすい。通常クーラントは赤や緑などの色が付けられており、濁りや変色があれば交換のサインと考えよう。あわせて量の確認も基本だ。リザーバタンクにはアッパー/ロワレベルが表示されているため、ロワ以下なら同じ種類・濃度のクーラントを補充する。ただし大幅に減っている場合は他のトラブルが疑われるため、安易に補充せず整備工場などで原因を調べた方がよい。
クーラントが劣化するとどうなるのか? 各機能の低下によって、例えば防錆効果が薄れ、ラジエターやエンジン内部で錆が発生する可能性がある。汚れを付きにくくする効果も落ちるため、見えない部分でスケールや沈着物が増えやすくなる。さらに冷却効率も悪化する。エンジン水温の安定には、新鮮なクーラントの使用が効果的だ。
クーラントは目立たない存在だが、水冷エンジンの健康維持には欠かせない。経年劣化するため、定期的な交換が重要だ。夏場の水温上昇対策はもちろん、半年後に控える冬の凍結対策としても、今この時期にクーラントのリフレッシュを検討する価値は高い。
土田康弘|ライターデジタル音声に関わるエンジニアを経験した後に出版社の編集者に転職。バイク雑誌や4WD雑誌の編集部で勤務。独立後はカーオーディオ、クルマ、腕時計、モノ系、インテリア、アウトドア関連などのライティングを手がけ、カーオーディオ雑誌の編集長も請負。現在もカーオーディオをはじめとしたライティング中心に活動中。