アジアパシフィック地域のデザイン責任者として、ソフィー・リが新デザインスタジオを率いる。《photo by Volvo》

ボルボが上海に建設していた新しいデザインスタジオが竣工した。100名余りのデザイナーとエンジニアがここで働き、中国の文化や市場動向を踏まえたデザインを提案していく。

◆中国事業の掌握を進めるボルボ
2010年に中国ジーリー・ホールディングの傘下に入ってまもなくボルボは上海にデザイナーを派遣し、デザインチームを作り始めた。それが本格化したのは、2015年にジーリーと折半出資で上海にR&Dセンターを設立したとき。ジョナサン・ディズリーが本社から転勤し、そのデザインスタジオを率いた。ちなみに『XC40』がベースとするCMAプラットフォームは、ジーリーとの共有化を見据えて、この上海R&Dセンターで開発されたものだ。

そして2021年、ボルボとジーリーの経営統合が廃案になったのに続いて、ボルボは生産工場、販売会社、R&Dセンターそれぞれでジーリーが持つ50%の株を買い取ることを決定。中国事業を完全掌握する体制を整えてきた。こうした体制強化の流れのなかで、今回の新デザインスタジオが建設されたのである。

◆欧州経験豊かな女性トップデザイナー
中国事業の体制が変わり始めた2021年4月に上海R&Dセンターに加わったのが、新デザインセンターのトップを務めるソフィー・リである。中国人だが、英国の名門コベントリー大学にデザイン留学。2012年にジャガーランドローバーに入社し、『ディフェンダー』や『レンジローバー』などのインテリアを歴任した後、自ら責任者となって設立した上海スタジオのマネージャーになっていた。

ジョナサン・ディズリーは21年末にボルボを退職(現在はボルボ・トラックスのデザインディレクター)。代わってソフィー・リが、ボルボの上海スタジオの責任者に昇格した。正式な肩書きは、「ヘッド・オブ・アジアパシフィック・デザイン」となる。

ソフィーたちの近作に、先日の上海ショーで公開された『EX90エクセレンス』がある。これは来年発売する電動SUV『EX90』に限定で用意される最上級仕様。中国の富裕層をメインターゲットとする超プレミアムなインテリアが特徴だが、ボルボらしいナチュラルで落ち着いた佇まいはもちろんそのままである。

中国語と英語のバイリンガルで、ドイツ語も少し話せるというソフィー・リ。豊かな欧州経験とデザインマネージャーとしての実績を持つ彼女が、今後のボルボ・デザインにどんな刺激をもたらしていくのか、楽しみにしたい。

上海市郊外に完成した新デザインスタジオ。R&Dセンターからデザイン機能を分離独立させたもの。《photo by Volvo》 4月の上海ショーで公開されたEX90エクセレンスは、上海のデザインチームが手掛けた。《photo by Volvo》