C-V2X技術を使うことで、見通しの悪い場所の情報をMECサーバーを通して知ることができる。《写真撮影 根岸智幸》

携帯電話の通信技術を交通事故のない未来を実現する技術開発が進んでいる。

携帯電話の通信技術を使って、クルマ同士や道路などと通信し情報を共有する。その実験の概要がソフトバンク先端技術研究所による技術展示会「ギジュツノチカラ」で公開された。

◆刻々と変化する交通事情を地域サーバーで共有
C-V2X(セルラーV2X:Cellular Vehicle-to-Everything)は、携帯電話(セルラー)の無線通信を使って、自動車とさまざまな機器が通信する規格だ。クルマとクルマ(V2V)、クルマと路面(V2L)、クルマと歩行者(V2P)、クルマとネットワーク(V2N)でそれぞれリアルタイムに位置情報などを交換・共有する。

携帯電話の国際標準仕様を決める3GPPが作った規格で、当初はLTEがベースだったが5Gに対応したことで、1ミリ秒という非常に少ない遅延で通信が可能になった。また、近年のMEC(モバイル・エッジ・コンピューティング=モバイル機器に近い場所に置いたローカルサーバーで情報を処理する技術)と組み合わせることで地域の交通情報をリアルタイムに共有できるようになり、これを使った交通安全のための技術開発をソフトバンク先端技術研究所が、本田技研工業やスズキと共同で行っている。

例えば、路上に停止している車両の影から人が飛び出てくる場合を想定する。C-V2Xが普及していれば、信号機に設置したカメラや対向車のカメラなどから取得した見えない位置から移動してくる人の情報を、その地域にあるMECサーバーに蓄積し、接近する車両に共有することで、事前にブレーキを踏んだり回避することが可能になる。

さらに横断歩道の手間に警告ランプを埋め込むなどして、交差点に接近する車両があったときに歩行者に警告するなどの実験もされている。

C-V2Xは、国際標準規格であるため、今後多くのメーカー、通信キャリア、道路行政などが対応すれば、交通事故が大幅に減る未来も実現しそうだ。

地域毎に設置されたMECサーバーに見通しの悪い場所の情報を集約していく。《写真撮影 根岸智幸》 C-V2Xによる道路情報共有のユースケース。《写真撮影 根岸智幸》 背後から接近する自転車の情報を後方を走るクルマのカメラやセンサーを通して知ることができる。《写真撮影 根岸智幸》 路上を移動する荷物や障害物の存在も検知できる。《写真撮影 根岸智幸》 横断歩道を渡る歩行者に接近する車両があることを知らせる。《写真撮影 根岸智幸》 交通安全のためのC-V2Xのシステム構成。《写真撮影 根岸智幸》