トンネル内でもC-V2Xを安定して提供するためにRSUを使って同期信号を発信する《写真撮影 会田肇》

クアルコムはITS世界会議2022に出展し、C-V2X(Cellular V2X)利用時に必要な同期信号を、全地球航法衛星システム(GNSS) 信号が利用できない長いトンネルや地下駐車場などでも拡張してカバレッジできる「サイドリンク同期信号(SLSS)」を紹介した。

C-V2Xとはその名の通り、携帯端末を通信ネットワークに用いるV2Xのことだ。V2Xが提唱された際、それを実現するにはインフラの整備が欠かせず、国土が広いアメリカや中国ではその実現はかなりハードルが高いとされてきた。

そうした中で登場したのが、携帯端末で自車と他のクルマや道路インフラ、歩行者などが持つ機器とダイクレトに通信するC-V2Xだ。携帯端末を持つことで誰も互いに送受信が行え、V2Xが実現するという考え方だ。すでに中国ではこれを国策として進めており、アメリカもこの方式への採用に傾きつつある状況にあるという。

ただ、C-V2Xを運用するにはそれぞれの信号を特定する必要があり、そのために正確な時刻情報の発信が欠かせない。その時刻情報に活用されるのがGNSSで、屋外ならその電波を受信することでその同期は問題なく行える。しかし、長めのトンネルや地下深い駐車場に入るとGNSSが受信できなくなり、この同期をとることが不可能となってしまう。

そこで移動通信システムの検討・作成を行う標準化プロジェクト「3GPP(Third Generation Partnership Project)」では、GNSSからの信号を受信できない状況下でも安定して同期がとれるサイドリンク同期信号 (SLSS:Sidelink Synchronization Signal)を提唱し、それを活用する取り組みを進めている。クアルコムが出展したのはそれに準拠したシステムとなっている。

会場で展開されていたデモでは、ニュージャージーとニューヨーク市を結ぶリンカーントンネルを通過する車を示していた。 車両がGNSS をカバレッジするRSU(Road Side Unit)付近を通過すると、車両は前方に作業ゾーンがあるという SLSS C-V2X 対応の通知を受け取り、対象地点までの距離と時間をカウントダウンするようになる。このシステムは自動運転での利用を想定するが、もちろん手動での運転でも利用は可能だ。

クアルコムジャパン標準化本部長の城田雅一氏は、「日本では760MHz帯を使ったV2Xがすでに実用化されているが、電波の干渉を防ぐためにもより高い周波数の5.9GHzを使ったC-V2Xが有利であることは間違いない。この技術は各社が取り組んでいる状況にあるが、弊社はその中で業界をリードできていると自負している」と述べた。

同期信号を発信するRSU。これが路側に設置される《写真撮影 会田肇》 デモに使われていた路側RSUと車両側OBU。中央が同期信号の発生器《写真撮影 会田肇》 トンネル内でも対象地点を正確に捉え、カウントダウンする状況がデモされた《写真撮影 会田肇》 C-V2Xでは、携帯端末を持つことで、誰でも人とクルマの位置が把握できるようになる《写真撮影 会田肇》 SLSSは、地下駐車場などのバレーパーキングの自動化にも展開できる《写真撮影 会田肇》 ITS世界会議2022に出展したクアルコム 《写真撮影 会田肇》