自動車向け半導体の逼迫「状況はもう1年続く」---日立製作所 河村副社長

日立製作所の河村芳彦執行役副社長CFOは7月29日に開催した2022年4〜6月期の連結決算会見で、自動車向け半導体について、今のような逼迫状況がもう1年続くとの見方を示した。

「半導体は去年の今頃の予想では、今年度になれば供給に余裕が出るのではないかと見ていたが、まだ非常に厳しい状況が続いている。ただ、半導体全部が同じように厳しいかというと、それは去年とは変わってきている」と河村副社長は前置きしたうえで、こう付け加えた。

「半導体といっても、2ナノ、3ナノといったスマホとか人工知能(AI)に使う先端的な半導体については、投資が集中的に行われ、需給関係が緩んできている。ところが、自動車に使っている20ナノとか30ナノといった1世代、2世代前のローエンドの半導体は投資が劣後していて、需給関係がまだ逼迫している。今のような状況がもう1年ぐらい続くのではないかと見ている」

その半導体逼迫状況の影響を最も受けているのが、子会社の日立アステモだ。同社は日立オートモティブシステムズと、ホンダ系部品会社3社(ケーヒン、ショーワ、日信工業)が経営統合して2021年1月に発足した会社で、2025年度に売上収益2兆円、EBITA15%を目指す目標を掲げていた。その目標に大きな暗雲が立ち込めてしまったと言っていいだろう。

というのも、中国ロックダウンの影響と併せて日立アステモの業績が大きく悪化、調整後EBITAが2021年4〜6月期に比べて178億円減少し、46億円の赤字に転落してしまったのだ。直前四半期(21年1〜3月期)と比較しても、296億円も悪化しているのだ。

そこで、アステモは抜本的な改革に着手しているそうだ。まず、自動車メーカーの意向でいろいろなビジネスが決まってしまう傾向があるので、それをだんだんと低減しながら独自で展開できる部分を増やしていく。

「デンソーやボッシュをモデルにしながら、独自の技術、例えば電動化とか、安全、ADASに経営資源を振り向けているので振り替えている。いずれその成果が出てくると考えている」と河村副社長と話し、同時にコストのコントロールということで、工場の統廃合や研究開発投資の絞り込みを行うなど総合的に見直しを進めているそうだ。

日立製作所全体の2022年4〜6月期の連結業績については、売上収益が前年同期比8.5%増の2兆5698億円、調整後営業利益が同6.8%減の1215億円、調整後EBITAが同3.9%減の1548億円、四半期利益が同69.6%減の371億円だった。

通期見通しは売上高が前期比4.0%増の9兆8500億円、調整後営業利益が同1.8%減の7250億円、調整後EBITAが同1.2%減の8450億円と、足元の円安をうけて従来予想からそれぞれ3500億円、250億円、250億円上方修正し、当期利益は同2.8%増の6000億円と従来予想を据え置いた。

日立アステモ(人とくるまのテクノロジー2022)《写真撮影 高木啓》