リニューアブルディーゼルバス(西武バス)《写真撮影 高木啓》

西武バス(本社:埼玉県所沢市)は、所沢営業所にリニューアブルディーゼルバスを導入し、7月14日より営業運行を開始する。先立つ13日に所沢営業所でリニューアブルディーゼルバスのお披露目・試乗会を実施した。

リニューアブルディーゼルは、食品競合のない廃食油や動物油等を原料として製造(再生=リニューアル)される燃料だ。石油由来の軽油と同様に使え、温室効果ガスを削減が期待できるので、主にトラック・バスでの使用に向いている。

西武バスは、リニューアブルディーゼルを100%使用して一般乗合バス(大型路線バス)1台を試験運行する。営業運行する旅客自動車での使用は日本で初めて(貨物車両では導入実績あり)。西武バスでのリニューアブルディーゼル導入では、伊藤忠商事がネステ(フィンランド)とリニューアブルディーゼルの日本向け輸入契約を締結、伊藤忠エネクスが国内のリニューアブルディーゼル輸送および給油のサプライチェーンを構築した。

ネステ社のリニューアブルディーゼルは、食品競合のない廃食油や動物油などを原料として製造される。CO2の削減については、ライフサイクルアセスメントベースでの排出量で、軽油と比べて約90%の削減となる。車両の排ガスに含まれるCO2では軽油とほぼ同じだ。

リニューアブルディーゼルの使用では、いわゆる「ドロップイン」燃料として、既存の車両や給油施設を流用することが可能だ。所沢営業所では通常の軽油のバスも運用しているため、リニューアブルディーゼル用の設備を新設したが、機器そのものは軽油用と変わらない。車両も従来の軽油ディーゼル駆動のバスをそのまま使える。西武バスでは既存のいすゞの1台をリニューアブルディーゼル専用で運用するが、改造はしていない。車体外装ラッピングを変えただけだ。

燃費は、西武バスでは2〜3km/Lほど、軽油と同じ程度と予想している。走行性能も同じ。実際に運転したドライバーも「変わらない」と答える。試乗の際に感じた振動や聞こえた音も通常のバスと何ら変わらなかった。燃料の見た目は、軽油は薄い緑色をした透明の液体だが、リニューアブルディーゼルは無色透明だ。匂いは、軽油特有のツンとした匂いが軽減されているという。排ガスの匂いも軽油と比べて不快な匂いが少ない。

リニューアブルディーゼルの価格は軽油の3〜4倍もする。使用量が増えたり、流通量が増えれば低下する可能性はもちろんある。また現在は国外からの輸入となっている。日本国内で生産する場合、主原料となる廃食油は国内ではすでに“出口”が決まっており、新たに調達ルートを構築する必要があるという。廃食油以外の原料としては、木材チップやゴミ(廃棄物)があるそうだ。

西武バスの塚田正敏代表取締役社長は「西武グループは『最良、最強の生活応援企業グルーブ』をめざしている。変化するエネルギー問題に柔軟に対応する」と語る(プレゼンテーション動画)。西武バスは環境にやさしく、地域に調和できる公共交通機関であるべく、次世代バイオディーゼルであるリニューアブルディーゼルを導入した。

塚田社長が「柔軟に」と言うように、温室効果ガスの削減につながる取り組みで西武バスは複数の選択肢を用意している。これまでにユーグレナ社のバイオディーゼル燃料の『サステオ』を導入、水素を動力源とした量販型燃料電池バス『SORA』も導入している。

今回導入したリニューアブルディーゼルと比較すると、ユーグレナバイオディーゼル燃料は生産量が少なく、価格が高い。また水素燃料電池は車両の代替えが必要になり、水素の充填設備も特殊なものになる。リニューアブルディーゼルは利用にあたって初期投資が少なく、トータルコストでこれらの代替燃料より優位と考えられる。

西武バスではリニューアブルディーゼルの運用を続け、データを取っていく。通常の軽油ではバス1台あたり1万5000Lを年間に消費するという。西武バスではリニューアブルディーゼルを5年は使いたいとする。運行系統は[所52]所沢駅東口〜東所沢駅〜志木駅南口、[所55]所沢駅東口〜安松〜東所沢駅の2路線。

リニューアブルディーゼルバス(西武バス)《写真撮影 高木啓》 リニューアブルディーゼルバス(西武バス)《写真撮影 高木啓》 リニューアブルディーゼルバス(西武バス)《写真撮影 高木啓》 リニューアブルディーゼル給油(西武バス所沢営業所)《写真撮影 高木啓》 リニューアブルディーゼル給油(西武バス所沢営業所)《写真撮影 高木啓》 リニューアブルディーゼル給油(西武バス所沢営業所)《写真撮影 高木啓》 リニューアブルディーゼルバス(西武バス)。従来型そのまま。《写真撮影 高木啓》 リニューアブルディーゼル給油(西武バス所沢営業所)《写真撮影 高木啓》 リニューアブルディーゼルバス(西武バス)。新所沢駅前《写真撮影 高木啓》