函館本線小沢駅の跨線橋。廃駅後には観光向けに跨線橋を活用した鉄道公園として整備することが検討されている。《写真撮影 佐藤正樹》

北海道は7月11日、北海道新幹線の札幌延伸時に廃止されることが事実上決定している函館本線長万部〜小樽間について、7月7日に開かれた14回目の後志(しりべし)ブロック会議で検討された転換バスのルートなどの概要を明らかにした。

同区間は営業距離がおよそ140kmにおよぶため、長万部〜黒松内、黒松内〜倶知安、倶知安〜余市、余市〜小樽の4区間に分けて「区間別検討会」を設置。沿線自治体と関係者との間で方向性を共有しながら、現行の鉄道の実態に沿い地域のニーズに応じたバスダイヤを検討するとともに、既存のバス路線を含め、バスの起動性を活かし高速道路も活用した新たなバスルートの検討や交通結節点となる乗継ぎ拠点の検討も進めるとしている。

区間別には次のような内容が検討されている。

長万部〜黒松内
既存の長万部線に準じたルートとし、黒松内駅(北海道黒松内町)を交通結節点としてバスの乗入れを行なう。同じ町内の隣接する熱郛(ねっぷ)駅には乗り入れないが、代わりに「道の駅くろまつない」に停留場を設置し、地域だけではなく旅行者にも利便を図る。

黒松内〜倶知安
蘭越〜倶知安間や小樽線といった既存バス路線の利用実態も考慮して新たなバスルートを設定。蘭越町内の目名駅と蘭越駅、ニセコ町内のニセコ駅、倶知安町内の倶知安駅へバスを乗り入れ、蘭越駅に隣接する昆布駅については現行の停留場を利用する。ニセコ〜倶知安間に位置する比羅夫駅については触れられていない。このほか、高速道路の開通を視野に入れ、蘭越〜小樽間の高速バス運行も行なう。

倶知安〜余市
既存の小樽線と類似のルートとし、小樽への通学生に配慮した設定を行なう。共和町内の小沢(こざわ)駅、仁木(にき)町内の仁木駅、余市町内の余市駅へはバスが乗り入れるが、仁木町内の銀山駅と然別(しかりべつ)駅については国道から離れているため、速達性を考慮して国道を走る転換バスとの接続点までは地域バスの「ニキバス」で対応。銀山駅周辺については無人運転バスの実証運行も視野に入れる。余市駅については交通結節点として乗継ぎ拠点を整備、小沢駅については歴史的な跨線橋を活用した鉄道公園を整備するとしている。

余市〜小樽
最も利用者が多く、通学需要も高いため、小樽市内では塩谷駅から山側の小樽環状線を通るルートを設定し、通学時間帯に増便。小樽市内の蘭島駅については駅舎を活用したバス待合所を設置。国道から離れている塩谷駅については、孤立を避けるため、既存バス路線の塩谷線を駅前に立ち寄るルートとする。

これらの検討に際し北海道や沿線自治体では、JR北海道に対してバス運行や既存駅舎の活用、鉄道施設の有効活用へ向けた協力を求めるほか、利用実態の把握や運行経費、車両購入費などの試算に資するため、7月15〜17日に長万部〜小樽間の各駅で乗降人員調査を行なうとしている。

長万部〜小樽間の区間別転換バスルート検討案。転換バス路線にはバスロケーションシステムの導入や交通系ICカードの活用も視野に入れており、鉄道時代よりも利便性が高い取組を検討するという。《資料提供 北海道》 長万部〜黒松内間の検討状況。長万部高校への通学の足が視野に入っている。《資料提供 北海道》 黒松内〜倶知安間の検討状況。環境配慮型バスの導入も検討されている。《資料提供 北海道》 倶知安〜余市間の検討状況。既存のものを含みニーズに応じた停留場の設置を検討する。《資料提供 北海道》 余市〜小樽間の検討状況。札幌直通については需要把握が必要として、現時点で検討保留となっている。《資料提供 北海道》 バスは乗り入れないが、道の駅に代替の停留場が検討されている熱郛駅。《写真提供 写真AC》 バスの乗り入れが検討されている蘭越駅。《写真提供 写真AC》 ニセコ〜倶知安間にある比羅夫駅。駅舎自体が宿になっている話題の駅だが、国道からかなり離れた秘境駅的存在のため、検討の俎上には載っていない模様。《写真提供 写真AC》 バスの乗入れが検討されているニセコ駅。ただし通学生に対する利便性や速達性を考慮して、駅を経由しないルートも検討される。《写真提供 写真AC》 小沢〜然別間にある銀山駅。鉄道マニアの間では人気が高い秘境駅だが、国道から離れていることから、駅乗入れには地域バスの活用が検討されている。《写真撮影 佐藤正樹》 小樽市内の蘭島駅。バス待合所としての活用が検討されている。《写真撮影 佐藤正樹》