自動車メーカー業界 他社牽制力ランキング2021 上位10社《表提供 パテント・リザルト》

特許を申請した際に、特許を拒絶する理由として別の特許が引用される。こうした拒絶理由になった特許件数の多い企業は、「他社牽制力」があるといえる。パテント・リザルトによると2021年、自動車メーカーで他社牽制力の1位はトヨタ自動車だった。

パテント・リザルトは、総務省の日本標準産業分類を参考にした自動車メーカーの企業を対象に、2021年の特許審査過程において他社特許への拒絶理由として引用された特許件数を企業別に集計した、『自動車メーカー 他社牽制力ランキング2021』をまとめ、7月4日に発表した。

言い換えると、技術開発において、競合他社が権利化する上で阻害要因となる、先行技術を多数保有している先進的な企業のランキングだ。パテント・リザルトの集計の結果、2021年に引用された特許が最も多い企業はトヨタ自動車、2位は昨年から1ランクアップの本田技研工業、3位は日産自動車となった。引用されたトヨタ自動車の特許数は6395で、2位 本田技研工業の2760の2倍以上。3位の日産自動車は本田技研工業よりわずかに少ない2719だった。

●1位:トヨタ自動車
最も引用された特許は「自律的な乗客用の乗り物のためのコンピューティング装置」に関する技術で、フォルクスワーゲンやKDDIなどの計7件の審査過程で引用されている。このほかには「ゲート絶縁膜が破壊されることを防止しつつ、オン抵抗の上昇を抑制できるSiC半導体装置」に関する技術が引用された件数の多い特許として挙げられ、富士電機などの計6件の拒絶理由として引用されている。2021年に、トヨタ自動車の特許によって影響を受けた件数が最も多い企業は本田技研工業(449件)で、次いでデンソー(363件)となっている。

●2位:本田技研工業
最も引用された特許は「小型化設計と車室内居住空間の拡大を可能とし、重量の軽減を図れる車体」に関する技術で、トヨタ自動車などの計8件の審査過程で引用されている。このほかには「混合気の圧縮着火を促進し、圧縮着火燃焼を安定して行えて、圧縮着火燃焼の実行領域を拡大できる内燃機関の制御装置」に関する技術が引用された件数の多い特許として挙げられ、マツダの計7件の拒絶理由として引用されている。2021年に、本田技研工業の特許によって影響を受けた件数が最も多い企業は、トヨタ自動車(348件)で、次いでデンソー(92件)となっている。

●3位:日産自動車
最も引用された特許は「電磁波によってその物体を検出した時点におけるその物体の移動速度および移動方向を求める物体検出装置」に関する技術で、三菱電機などの計6件の審査過程において拒絶理由として引用されている。2021年に、日産自動車の特許によって影響を受けた件数が最も多い企業は、トヨタ自動車(420件)で、次いで本田技研工業(190件)となっている。

そのほか、4位マツダは「副室の連絡孔の壁面の温度を低下させて熱疲労によるクラックの発生及び溶損等を防止した、ディーゼルエンジンの燃料噴射装置」、5位 豊田中央研究所は「MnAl系合金からなる高磁気特性な永久磁石」が、最も引用された特許として挙げられる。

なおランキングの集計対象は、日本特許庁に特許出願され、2021年12月までに公開されたすべての特許のうち、2021年1月から12月末までの期間に拒絶理由(拒絶理由通知または拒絶査定)として引用された特許を抽出した。

パテント・リザルトでは、このランキングの詳細データを5万5000円で販売している。

トヨタの研究開発拠点のひとつ:トヨタ・テクニカルセンター・ミシガン《photo by Toyota》 ホンダの研究開発拠点のひとつ:本田技術研究所栃木研究所《写真提供 ホンダ》 日産の研究開発拠点のひとつ:日産テクニカルセンターヨーロッパ《写真提供 日産自動車》