アナログ・デバイセズは、オペアンプやADコンバーターなどアナログ系半導体のトップベンダーのひとつだが、近年、マキシム、ヒッタイト、リニアテクノロジーなどデジタル・アナログに強いチップベンダーを買収し、CASE車両への対応を万全としている。
名古屋オートモーティブワールド2021会場では、自動運転AIや高画質エンタメ向けの4K画像処理チップ(GMSL:Giga-bit Multimedia Serial Link)や650Vのオンボードチャージャーユニット、車内コミュニケーションなどのソリューションを展示していた。これらは基本的に量産・市販を前提としたチップをベースにシステムを構成するものだが、OEMとの共同開発として「wBMS」の展示を行っていた。
EVにおいてその性能を左右するのは、インバーターとバッテリ管理システム(BMS)だ。BMSは、バッテリーパックを構成するセルごとの状態をセンシングし、充放電を制御したり、セルの劣化や健康状態を把握する。通常、セルごとに制御基板を接続し、BMSの頭脳となるMPU(ECU)に有線で信号を送る。同社が開発したwBMSは、各セルとMPUの間をワイヤレス(無線通信)で接続する。通信はISMバンド(2.4GHz)を利用した独自のプロトコルを採用している。
無線通信となると消費電力が増えるのでは、という心配があるが近距離の省電力伝送であり、2.4GHz帯とはいえ、実際のデータ容量は大きくない。また、通信プロトコルは、MPU側のマスターが必要に応じて接続するため待機電力を抑える工夫がされている。従来型の有線方式と同程度の消費電力だという。
ワイヤレスになるとなにがうれしいかというと、第一に配線不要となることでセルやBMSの配置に自由度が増す。さらに配線コストの削減と軽量化にも貢献する。セルの配線など大した重さではないかもしれないが、完成車のコストダウンや軽量化はモジュールひとつでもグラム単位のシビアな世界だ。100前後のセルを集積するEVのバッテリーパックでは、誤差ではない軽量化が可能になるかもしれない。基板やセルの配置も、配線を気にせず最適化できるかもしれない。
電動化関係では、車載用のAC/DCチャージャーの展示もあった。こちらは耐圧650Vまでの充電モジュールだが、絶縁ユニットにアルプスアルパインの低透磁率・高磁束密度・低損失の磁性体を使ったトランスを使い、小型化に成功している。トランスの大きさを従来品の1/3程度まで小さくしながら、3.3kWの出力が可能だ。出力3kWのときでも効率は93%以上を確保する。
GM Ultiumに採用予定のワイヤレスBMSデバイス…名古屋オートモーティブワールド2021
2021年10月27日(水) 21時49分
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