WRC最年少記録となる初優勝を成し遂げたカッレ・ロバンペラ(トヨタ)。《Photo by TOYOTA》

世界ラリー選手権(WRC)第7戦がエストニアで現地15〜18日に開催され、トヨタの20歳カッレ・ロバンペラが自身初優勝を飾った。従来の記録を2歳更新する「WRC史上最年少優勝」となっている。

高速グラベル(未舗装路)での戦いが中心のラリーエストニア、ここをほぼ完全制圧するかたちで勝ったのはトヨタ・ヤリスWRCを駆るフィンランドの若侍、#69 カッレ・ロバンペラだった。最終的には2位の#42 クレイグ・ブリーン(ヒュンダイi20クーペWRC)に約1分差で勝利し、自身WRC初優勝を達成。トヨタにとっては5連勝で今季6勝目となった。

ロバンペラは神童とも評された新鋭で、まだ20歳。昨季からトヨタのワークスチーム「TOYOTA GAZOO Racing World Rally Team=TGR-WRT」でヤリスWRCを通年ドライブする機会を得た。そして今季第2戦終了時点ではドライバーズポイントリーダーになるなど、期待に違わぬ活躍を見せる。ただ、その後はこれといった結果が出ず、WRC初優勝はお預け状態のまま、ドライバーズポイントランキングも降下してしまっていた。

だが、そんな状態をロバンペラは長く続かせはしなかった。「エストニアのような高速ラリーは好きだ。母国フィンランドと同じような、高速で流れる道が多く、自分に合っている」と戦前に語っていた一戦で、大願成就をやってのけたのである。

父のハリもWRC優勝経験者というカッレ・ロバンペラは、2000年10月1日生まれ、20歳と約9カ月半という若さでWRC初優勝を成し遂げた。従来のWRC最年少優勝ドライバーは、現在トヨタワークス(TGR-WRT)のチーム代表を務めているヤリ-マティ・ラトバラである。ラトバラは初優勝時、22歳と約10カ月だったとされるので、ほぼ2歳ちょうどの記録短縮になっている。

優勝した#69 カッレ・ロバンペラ(トヨタ)のコメント
「優勝することができて本当にいい気分だよ。優勝を目標に戦ってきた。チームには本当に感謝している。今年は自分にとって難しい年になっていたけど、彼らは手厚くサポートしてくれたし、クルマのフィーリングもチームもとても良かった」

「最年少優勝という記録を残せたことも、とても嬉しいね。ヤリ-マティ(ラトバラ代表)が『自分の記録を更新してほしい』と言ってくれていただけに、とても意味のある勝利だと思う」

「今日(最終日の日曜)は思いのほかフィーリングが良く、プレッシャーを感じることなく普通に走れたし、ペースも良かった。一度勝つことによって重圧から解放され、気持ちも楽になる。今回の優勝は自分(の今後)にとって大きな助けになるはずだ」

これがWRC新時代のトビラを本格的に開く1勝となったかは、今後のロバンペラの戦いぶりによって決まることになる。本人も言うように、一度勝ったことで大きく弾けそうな予感もする、未来のチャンピオン候補だ。

第7戦エストニアの3位はヒュンダイの#11 ティエリー・ヌービル。もうひとりのヒュンダイ勢主軸で、昨年はこの母国エストニアでのWRC初開催戦に勝っていた#8 オット・タナクは金曜(16日)にパンク連発でデイリタイアを喫し、ラリー総合結果31位。

4〜5位には#1 セバスチャン・オジェ、#33 エルフィン・エバンスとトヨタ勢が続いた。ドライバーズポイントランキング1〜2位の彼らはラリー序盤の出走順が不利になる面があり、そのあたりも影響した表彰台圏外という結果だろうか。ドライバーズチャンピオン争いという意味では、ランク1位の#1 オジェがボーナスポイントが与えられる最終スペシャルステージ(パワーステージ)でも#33 エバンスより上の順位を取り、#33 エバンスに対するリードを37点へと広げている(148対111)。

ともに表彰台を逃したなかでも、#1 オジェにとっては「チャンピオンシップを考えればポジティブな一歩」という一戦であり、「リズムをつかめなかった」と振り返る#33 エバンスにとっては厳しい一戦となったようだ。ただ、両者とも若き僚友#69 ロバンペラの勝利を祝福しているのは同じである。

前戦でラリー総合の2位となった#18 勝田貴元(トヨタ・ヤリスWRC)は今季初リタイア。これは金曜にコ・ドライバーのダニエル・バリットがビッグジャンプからの着地の際に強い衝撃を受け、首に違和感をおぼえたことによる、大事をとっての戦線離脱だった(バリットは無事。医師の診察で安静を指示されたということなので、陣営と勝田によるリタイアの判断は正解だった)。

なお、この週末はトヨタ(TOYOTA GAZOO Racing)が主戦場とする2つの世界選手権戦、WRCとWEC(世界耐久選手権)が両方開催される週末となっていたが、WEC第3戦モンツァ(イタリア)でもトヨタの小林可夢偉組が優勝を飾っている。これまでにも同時優勝はあったが、今年最初の同時開催機会にして、現状では今年唯一となりそうな同時開催機会で、トヨタは同時優勝を達成した(WECモンツァ詳報は追って掲載)。

WRCの次戦第8戦はベルギーが舞台、8月13〜15日に開催が予定されている。

(*本稿の順位、開催予定等は日本時間19日午後5時の時点でのWRC公式サイトの表示等に基づくもの)

WRC第7戦エストニアを制した#69 ロバンペラ(コ・ドライバーはJ.ハルットゥネン)。《Photo by TOYOTA》 優勝した#69 ロバンペラ(トヨタ)。《Photo by TOYOTA》 左から、優勝コ・ドライバーのハルットゥネン、前・最年少優勝記録保持者でトヨタの現チーム代表であるラトバラ、その記録を更新したロバンペラ。《Photo by Red Bull》 2位の#42 ブリーン(ヒュンダイ)。《Photo by Red Bull》 3位の#11 ヌービル(ヒュンダイ)。《Photo by Red Bull》 WRC第7戦エストニアの表彰式。《Photo by TOYOTA》 初優勝を飾ったカッレ・ロバンペラは、さらなる高みを目指す。《Photo by TOYOTA》