『ドライブ・マイ・カー』 (c) 2021『ドライブ・マイ・カー』製作委員会

俳優であり演出家の家福は、愛する妻と満ち足りた日々を送っていた。しかし、妻はひとつの秘密を残して突然この世からいなくなってしまう。2年後、演劇祭に愛車で向かった家福は、ある過去をもつみさきと出会う---。

主演に西島秀俊を迎え、村上春樹の短編を映画化した濱口竜介監督最新作『ドライブ・マイ・カー』がこの夏、TOHOシネマズ日比谷ほかにて全国公開される。

濱口はこの作品に惚れ込み映画化を熱望、自ら脚本も手掛けた。濱口は、カンヌ映画祭コンペティション部門に選出された『寝ても覚めても』、ベルリン映画祭で銀熊賞を受賞した短編集『偶然と想像』を監督し、さらに脚本を手掛けた黒沢清監督作『スパイの妻』がヴェネチア映画祭で銀獅子賞を獲得した。出演は、主演の西島に加えてみさきを演じる三浦透子ほか、岡田将生、霧島れいから。

この度公開された劇中写真に、家福の専属ドライバーとなったみさきが彼を後部座席に乗せている車中の写真がある。車は1978年から販売されたサーブ『900』初代だ。長期間生産された車で、ボディタイプも数種類ある。写真の車は全体が写ってはいないものの、後席サイドウインドーの形状から3ドアハッチバックだとわかる。

ところが家福は、ドアがないにもかかわらず後席に座っている。左ハンドル車なので、車道側から乗り降りするか、歩道側だとドライバーが降りてから乗り降りすることにもなる。ドライバーを雇って後席に乗るための車ではないように思われるが?

喪失感を抱えたまま生きる家福は、寡黙なみさきと過ごすなか、それまで目を背けていたあることに気づかされていく……。

『ドライブ・マイ・カー』 (c) 2021『ドライブ・マイ・カー』製作委員会 『ドライブ・マイ・カー』 (c) 2021『ドライブ・マイ・カー』製作委員会 サーブ900。写真は1988年のターボ。《Photo by National Motor Museum/Heritage Images/Hulton Archive/ゲッティイメージズ》