三井化学の橋本修社長

三井化学は6月2日、経営概況説明会をオンラインで開催した。そのなかで橋本修社長は2020年度の連結業績見通しについて、営業利益が350億円と前年度に比べて50%以上減少することを明らかにした。

「コロナウイルスの影響、原油価格下落による評価損の影響を受けて20年度においても引き続く厳しい状況が続く」と橋本社長は話し、特にモビリティ事業と基盤素材事業の落ち込みが大きいという。

モビリティ事業の営業利益は前年度の427億円から152億円(36%)減少の275億円、そして基盤素材事業は同87億円から202億円(232%)減少して115億円の営業赤字に転落する。

ただ、足元のモビリティ事業は徐々に回復してきているそうだ。「特に回復が早かった中国はわれわれの工場もフル稼働に近い状態まで戻ってきている。米国、欧州についても、完全に止まっていた状態から徐々に動き出し、われわれも生産を開始して稼働を上げていっている」と橋本社長は説明し、こう付け加える。

「われわれの見立てとしては、自動車の生産自体は上期は事情に厳しい状態が続き、50%減とかになるのではないか。下期に徐々に戻ってくるが、完全に回復するまでには行かないだろう。年間を通して見れば、総生産台数は大体20%ぐらい落ちるのではないかと思う」

しかし、CASE関連のICT製品はコロナウイルスの影響があるものの、ニーズとしては非常に堅調とのことだ。そこで、三井化学ではポストコロナを睨んで、自動車の開発支援を手がけるアークを100%完全子会社化するとともに、社内に組織横断的な責任と権限を付与した「モビリティCoEプロジェクト推進室」を設置する。

CoEとはCenter of Excellenceの略で、今後起こりうる大きな変化を見据え、顧客に最速・最適なソリューションを提供する。例えば、軽量化やCASEなどのソリューションがそれに当たる。グローバルに情報収集や戦略立案などを行い、事業開発をリードする役割を果たすそうだ。

また、アークを100%子会社化する狙いについて橋本社長は「彼らが持っているモデルの試作技術とか、いろいろなデジタル技術とか、ソリューション周りのビジネスを非常に豊富に持っているので、それを使い切るということでは100%子会社化することは意味があることだと思う。お客のニーズに対して早く、あるいは新たな視点で提案できるだろうと思う」と説明する。

いずれにしても、三井化学のモビリティ事業はしばらくの間厳しい状況が続くのは間違いが、「モビリティ事業はコア中のコア事業で、非常に重要な事業だ。われわれがこれまでやってきたことが今後、自動車マーケットの回復とともに必ずお役に立てるときが来る」と橋本社長は前向きだった。

経営概況説明会でのスライド 経営概況説明会でのスライド