ブガッティ・シロン・ピュルスポール の開発プロトタイプ《photo by Bugatti》

ブガッティは5月19日、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の感染拡大の影響で中止していた『シロン・ピュルスポール』(Bugatti Chiron Pur Sport)の開発テストを再開した、と発表した。

シロン・ピュルスポールは、『シロン』をベースに、コーナリング性能を引き上げることに重点を置いて開発されている。2020年後半から世界限定60台が生産される予定で、価格は300万ユーロ(約3億5460万円)だ。

◆空力性能を引き上げる新デザイン

シロン・ピュルスポールでは、エアロダイナミクス性能を高める新デザインを採用する。フロントには、ワイド化された吸気口と、専用グリルを装着した。フロントリップスポイラーは、前方に突き出た専用デザインで、最大のダウンフォースを生み出す。

リアには、長さ1900mmの固定式の大型ウイングを装着し、ダウンフォースを高めた。専用のディフューザーも装備される。角度の付いたウイングマウントは、リアバンパーとともに、大きなX字を形成する。3Dプリントされたチタン製の軽量エグゾーストパイプが採用された。ベース車両の格納式リアスポイラーの油圧コンポーネントを廃止することにより、10kgの軽量化を果たしている。

オプションのエアロウィングを備えたマグネシウム製の軽量ホイールは、1本あたり4kg軽い。最適なホイール換気を行い、エアロダイナミクスも向上させる。ホイール4本で重量を合計16kg削減することにより、バネ下重量も減少させた。

インテリアは、アルカンターラを多くの部分に使用した。ダイナミックなパターンが、アルカンターラ張りのドアトリムパネルにレーザー加工されている。ステアリングホイールもアルカンターラ仕上げで、理想的なグリップを追求する。シートは、サイドのサポート性を引き上げた。すべてのトリムパネルとコントロールスイッチは、黒色の陽極酸化アルミまたはチタンで作られている。各部にクロスステッチをあしらう。ステアリングホイールの12時の位置には、青いハイライトが追加されている。

◆サスペンションを専用チューニング

ブガッティは、とくにワインディングロードで本領を発揮するシャシーとサスペンションを、シロン・ピュアスポーツ向けに開発している。快適性を犠牲にすることなく、フロントに65%硬いスプリング、リアに33%硬いスプリングを採用した。アダプティブダンピングのコントロール、キャンバー値の変更(マイナス2.5度)により、さらにダイナミックなハンドリングを追求している。

フロントとリアのカーボンファイバー製スタビライザーは、さらにロールを最小限に抑える。ばね下重量は、19kg軽量化された。この19kgは、16kgにおよぶ車輪の軽量化に加えて、チタン製ブレーキパッドのベースパネルによる2kgの軽量化、ブレーキディスクの1kgの軽量化を合計したものだ。また、シャシー、サスペンション、ボディの接合部分の剛性を、フロントで130%、リアで77%強化することにより、路面への接地性を向上させている。

タイヤは、ミシュランが新開発した高性能タイヤ「Sport Cup 2 R」だ。フロントが285/30R20、リアが355/25R21サイズを履く。新素材のコンパウンドのおかげで、高いコーナリングスピードでも優れたグリップ力を発揮するという。

◆8.0リットルW16気筒+4ターボは1500hp

ミッドシップには、2ステージターボ化された8.0リットルW16気筒+4ターボエンジンを搭載する。最大出力は1500hpと変わらないが、発生回転数は6700rpmから6900rpmへ、200rpm引き上げられた。最大トルクは、163kgm/2000〜6000rpmと変わらない。

7速デュアルクラッチの「DSG」は、全体のギア比を15%クロスレシオ化した。駆動方式は4WDだ。ブガッティによると、60〜120km/hの中間加速は、ベース車両に対しておよそ2秒短縮しているという。

4種類のドライブモードに加えて、「スポーツ+」モードが採用された。通常のスポーツモードよりも、サーキット寄りの設定となっており、高速コーナーでもドリフトできる理想的なラインを走行できるという。

◆ドリフトを支援するスポーツ+モードのテストを重視

ブガッティは、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で中止していたシロン・ピュルスポールの開発テストを再開した。シャシー、ハンドリング、ダンパーコントロール、ステアリング、タイヤの摩耗、ギアボックスの微調整など、量産に向けて、すべての新しいコンポーネントのテストが不可欠という。

再開された開発テストの舞台は、ドイツのビルスター・ベルク・サーキットだ。森の中に位置し、右コーナー9、左コーナー10、20%の上り勾配、26%の下り勾配を備える。最も高い標高は4207mで、最も低い地点との差は70mある。

現地の法規制に準拠して、エンジニアはヘルメットと防火服を着用した。彼らの仕事は、非常に短時間で正確なデータを測定・分析し、その結果を車両に適用することだ。開発責任者やシャシー開発責任者を含めて、8人のエンジニアでチームを結成し、プロトタイプ車両でテスト走行を行う。新型コロナウイルスの感染拡大を防止するため、すべての安全基準を遵守し、従業員の健康を危険にさらさないように、チームの規模は縮小している。

サーキットテストでは、とくに新しいドライブモードのスポーツ+のテストが重視されている。経験豊富なドライバーが、サーキットで簡単にドリフトできるように、ESCを最適にチューニングする。

ブガッティは今後、全長20.83kmを超えるドイツ・ニュルブルクリンク北コースを含めて、サーキットでさらなるテストを行う、としている。

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