日本自動車工業会の豊田章男会長《写真 トヨタ自動車》

日本自動車工業会の豊田章男会長は4月10日、日本自動車部品工業会、日本自動車車体工業会、日本自動車機械器具工業会のトップ3人とともに、ネット中継による記者会見を行い、自動車業界全体で新型コロナウイルス危機を乗り切る決意を表明した。

「本日の内容にはこれから考えていくことなど、われわれの想いや宣言のようなものが含まれている。具体的に決まっていなくても思いを話すことで、一緒にやってみようと、手をあげてくれる方が出てくるかも知れない。危機的な状況だからこそ、そういうことが必要だと考えた」

冒頭の挨拶でこう話した豊田会長は、まず医療崩壊をさせないために少しでも役に立てることをやっていくと強調した。例えば、現在ほとんど手に入らなくなったマスクを自動車業界で生産していき、人工呼吸器についても、製造している企業に行って増産の支援を行う。

また、患者の移送に必要な車両の提供やそれに適したクルマにするための改造、病室用ベッドの部品などの製作に取り組んでいく。そして、空いている寮や保養施設を軽症患者が療養する施設として活用してもらうことも考えているとのことだ。現在、自工会会員各社で合計3000程度の部屋が用意できるという。

「終戦時の話になるが、工場を失ったトヨタはなんとか生き延びていくために、つくれるものは何でもつくった。鍋やフライパン、さらには工場周辺の荒れ地を開墾して芋や麦までつくった。とにかく今やるべきことをしっかりやっていく」と豊田会長は話す。

そうは言っても、新型コロナウイルスの感染拡大で受注の急減や資金繰りに困っている中小の部品メーカーも少なくない。そこで、豊田会長はファンドを立ち上げて資金を提供する考えを示した。立ち上げ時期や資金規模などは今後検討して詰めていくそうだ。

「今はとにかく致命傷を負わないことが重要だと想う。われわれ4団体にとっての致命傷は、各社が持つ要素技術と人材を失うことだ。ものづくり企業を支えている基盤は技術、技能を習得した人材であるので、なんとか元気なグループが弱っているところを助けられる互助会のような仕組みがあってもいい。即断即決即実行するためのお金という意味でファンドという形を考えていきたい」と豊田会長は説明する。

また、工場の稼働については、感染者を出さないように細心の注意を払いながら、できる限り稼働を続けていきたい方針で「新型コロナウイルスが終息したあかつきには、自動車産業が回復の一番の牽引役になる」と力強く話していた。

いずれにしても対策はスピードが重要で、石橋を叩いて渡るのではなく、やりながら修正していく柔軟な姿勢が求められそうだ。

自動車工業4団体の合同会見の様子《写真 トヨタ自動車》 トヨタ自動車元町工場《写真 トヨタ自動車》