2019年12月のWECバーレーン戦(2019/2020シーズン第4戦)《写真提供 TOYOTA》

世界耐久選手権(WEC)は3日、事実上の中断状態にある2019/2020シーズンの残り日程について新たな発表を行なった。万事予定通りならば今年の6月で終わるはずだったシーズンを11月まで引っ張るかたちの、大幅な改定となっている。

新型コロナウイルス感染拡大問題は多くのモータースポーツ・カテゴリーに影響を及ぼしているが、まずWECに関するここまでの経緯を大まかにまとめると、全8戦予定の2019/2020シーズンは19年9月1日決勝の英国シルバーストン戦で開幕し、20年2月の米国オースティン戦までに5戦を終了していた。しかしコロナ禍によって3月の米国セブリング戦が中止になり、4月のスパ・フランコルシャン(ベルギー)戦は無期延期、そして6月のルマン24時間レース(フランス)は9月への延期が決まっていた。

そして今回、既決のルマンを含む2019/2020シーズン「残り3戦」の改定カレンダーが下記のように発表されている。大幅な改定になったといっていい内容だろう(日付は決勝日、いずれも2020年)。

8月15日/スパ・フランコルシャン6時間
9月19〜20日/ルマン24時間
11月21日/バーレーン8時間

当初予定と同じレース数(全8戦)が維持される格好で、実戦再開予定は8月に。「最終戦はルマン」という原則的構図は崩れた。本来ならば19年後半と20年前半で構築されるはずだった2019/2020シーズンはルマンの9月への延期が決まった段階よりも延長規模が拡大し、「19年後半+20年丸一年」というかたちに変化している。

最終戦の舞台はバーレーンになった。バーレーン戦は19年12月にも開催されているため、2019/2020シーズンはバーレーン戦が2回、ということにもなる(20年の年末のバーレーン戦は元来、次なる2020/2021シーズンの一戦として20年12月に組まれていた)。

現在のWECは2012年に始まり、2017年までは「年=シーズン(季)」だった。しかし「例年6月のルマンを最終戦にする」という意図に基づき、年跨ぎ制のシーズン方式に移行。その際に移行措置として2018/2019シーズン(第7シーズンあるいはシーズン7)に関しては「18年丸一年+19年前半」というルマンを2回含む“1年半”のカレンダーが当初からの予定として組まれ、実際に遂行された。

続く今季、2019/2020シーズン(第8シーズン)が本当の意味での年跨ぎ制初季ともいえたわけだが、コロナ禍によって、またしても1年半のカレンダーでシーズンを進める事態となってしまっている(今度はルマン1回の1年半カレンダーで、しかも最終戦がルマンではない、などといった前季との違いはあるが)。

そして次なる第9シーズンは本来2020/2021シーズンのはずで、オーソドックスなかたちの暫定カレンダーも存在していた。しかし、それは一旦ほぼ白紙に戻されている。第9シーズンが2020年のうちには開始されない旨も今回の発表内容に含まれており、2020/2021シーズンという呼び方は用いられないことになるだろう。はたして第9シーズンはどういう構成になるのか。

なお、例年秋に開催されている富士スピードウェイ戦は、次回大会が2020/2021シーズン(第9シーズン)暫定カレンダーに20年11月1日決勝のスケジュールで載っていたが、今回の発表内容を踏まえて考える限り、今年(20年)の開催はなくなったと見るしかない状況だ。現時点で“直近の過去開催”に該当する富士戦は19年10月に2019/2020シーズン第2戦として実施されたレース。その次となる富士戦がいつ開催されるかについては、今後の発表を注視したい。

また、今回発表された内容も、今後の新型コロナウイルス問題の推移次第でさらなる変更を受ける可能性があることは当然ながら付記されている。いずれにしても、WECが複数シーズンに跨る煩雑な“構成変更”を強いられているのは確かで、将来的にも記録統計等の面で相当なややこしさを背負い込むこととなっている。

2019年12月のWECバーレーン戦(2019/2020シーズン第4戦)《写真提供 TOYOTA》 2019年12月のWECバーレーン戦(2019/2020シーズン第4戦)《写真提供 TOYOTA》 2019年6月のルマン24時間レース(WEC 2018/2019シーズン第8戦=最終戦)《写真提供 TOYOTA》 2019年5月のWECスパ・フランコルシャン戦(2018/2019シーズン第7戦)《写真提供 TOYOTA》