豊田章男自工会会長(参考写真)《撮影 池原照雄》

日本自動車工業会の豊田章男会長は3月19日の記者会見で2020年の春闘交渉について「以前は賃金をどうするかに焦点が当たっていたが、変革の時代をいかに生き抜いていくか、競争力を高めるためにお互い何をすべきか真剣に話し合った」と、評価した。

今春闘ではトヨタ自動車がベースアップ(ベア)に相当する賃金改善分を7年ぶりにゼロとした。また、全般的な業績の悪化を背景として年間一時金についても乗用車メーカー8社のうち、6社が前年実績割れとなるなど、組合側には厳しい結果となった。

豊田会長は、労使の交渉が「各社ばらつきはあるものの、一律ベア一辺倒の議論から(手当などを含む)総額議論に変わってきている」との認識を示したうえで、自動車産業では「着実に賃上げは継続傾向にあるのではないか」と指摘した。トヨタは、ここ2年連続で要求総額のみを公表する交渉に転換している。

また、従業員に対して一律で昇給などを行うのでなく「頑張る人への投資という変化も、今回の春闘で見られた」と述べ、個々の成果や頑張りに見合った評価を導入する業界の動きに言及した。

そのうえで、自動車産業は長期にわたって「雇用と賃金の両方を持続的に上げている」とし、雇用については「2000年時点を100とすると、(2008年の)リーマン・ショックを乗り越えて現在は104にきている。非常に大きな雇用を抱えている」との統計を引き合いに出した。さらに「今後もいろいろと多様化する働き方に対応しながら、こうした雇用を維持して日本経済の発展に貢献したい」と話した。