独・ランクセスは、自動車向けプラスチック製品の生産工場を中国に新設し、9月から本格稼働した《撮影 石川徹》

特殊化学品の世界的な大手、独・ランクセスは、自動車向けプラスチック製品の生産工場を中国に新設し、9月から本格稼働した。同工場で生産される高性能プラスチックは、金属と同レベルの強度を保ちながら最大で50%の軽量化を可能にするという。

ポリアミド系の「デュレタン」は強度に優れ、過去には金属製が一般的であった自動車のドアハンドル、フロントエンドの構造体やインテークマニフォールドなどに使用されている。一方、ポリブチレンテレフタレートをベースとする「ポカン」は絶縁性能に優れ、車や電車、航空機などのモーターハウジングなどに多く採用されているという。

各種の報道や完成車メーカーなどの2019年上半期決算から、中国経済、特に自動車市場の成長には陰りが見える。そんな中、およそ26億円を投じて新規に生産能力を増強したランクセスだが、中国市場および高性能プラスチックの需要はまだ充分成長のポテンシャルがあると考えている。

中国では、いわゆる「新エネルギー車両」の促進政策によって車両の電動化が急速に進んでいる。上海などの都市部では、スクーターなどの二輪車のほとんどが電動化されている。ランクセスによれば、今年の6月時点で、中国国内を走る乗用車のうち281万台が電気自動車(EV)というデータがあるそうだ。

電動化が進めば、一般に車両重量は増加する。ハイブリッド車の場合は、エンジンに加えてモーターやバッテリーの搭載が必要となる。EVの場合、エンジンやそれに関わる機構はなくなるが、モーター、そして大型のバッテリーによって重量はかさむ。そして、車両の重さは一回の充電で走行可能な距離に影響を与える。現在、自動車メーカーが電動化を進めるにあたっての最も大きな課題の一つがこの航続距離だろう。

ランクセスは、プラスチックの軽量度を金属素材並みの強度とバランスさせることで電動化の進む自動車産業に可能性を見ている。もちろん、このタイミングで悲観的なコメントをすることはないだろうが、先行きの不透明感がグローバルに語られるようになった自動車業界および中国市場において、積極的な投資を続ける同社の戦略に注目したい。

独・ランクセスは、自動車向けプラスチック製品の生産工場を中国に新設し、9月から本格稼働した《撮影 石川徹》 独・ランクセスは、自動車向けプラスチック製品の生産工場を中国に新設し、9月から本格稼働した《撮影 石川徹》 ランクセスの経営委員会メンバー、フーバト・フィンク博士《撮影 石川徹》