ペルモビールの電動車いす「F5VS」《撮影 山田清志》

「国際福祉機器展2019」には車いすの人も多く来場していた。その来場者が熱い視線を送っていた電動車いすの1台がペルモビールの「F5VS」と言っていいだろう。その周りには常に多くの人が集まっていた。

同社は1963年にペル・ユーデン氏がスウェーデンの地方都市で興した会社で、設立以来一貫して電動車いすを手がけてきた。創業者の名前に“移動”を意味する“mobil”を加えて社名にしたわけだが、この社名は今やスウェーデンで電動車いすの代名詞ともなっているという。

現在、20カ国以上の国々で製品を販売し、日本では2003年に子会社を設立して販売を行っている。その企業理念は「すべての障害者が使う機器は、われわれが日常生活で使用するモノと同じ技術レベルで製作されるべきである。すべての障害者は、満足のいく生活を送る権利を有する」である。

さて、注目の的となった「F5VS」だが、何とその形が変化するのだ。座席と背もたれの部分が上方に伸びていき、足から頭まで一直線になってスタンディングの体勢が取れるようになる。

「座位からスタンディングに至るまですべての姿勢で走行が可能になっています。1回乗ると、その良さが分かると思います。購入したお客さまの中には、これに乗って立ち飲みに行った人もいました。また、海外では購入したご婦人が旦那様とちゃんとハグができて喜んでいたという話もあります」と同社関係者は話す。

もちろんそれぞれの人の身体に合わせてバックレストの角度やフットプレートの高さは調整でき、転倒防止車輪の設置など安全性にも配慮している。とはいうものの、価格は決して安くなく、360万円からとなっている。

「ほかにも注目の製品があります。それは普通の車いすにこの装置をつけるだけで電動車いすになるというものです」と同社関係者は手に取って説明する。

「スマートドライブ」と名づけられたそれは、着脱式の電動アシストで、車輪と車輪を結ぶバーにこれを設置するだけと、取り付けはいたって簡単だ。そして、その操作は「プッシュトラッカー」というスマートウォッチのような時計で行う。ブルートゥースでつながっていて、画面を2回続けて叩くと電動アシスト装置のスイッチが入り、また2回続けて叩くとスイッチが切れる。こちらはセットで65万円だ。

いずれの製品もデザイン性を重視しており、同社関係者は「福祉機器と言っても、服と同じで見た目は大事です。やはり使いたくなるようなものでないと、ユーザーにはなかなか受け入れられないと思います」と話していた。

ペルモビールの電動車いす「F5VS」《撮影 山田清志》 ペルモビールの電動車いす「F5VS」《撮影 山田清志》 ペルモビールの電動車いす「F5VS」《撮影 山田清志》 ペルモビールの「スマートドライブ」《撮影 山田清志》 ペルモビールの「プッシュトラッカー」《撮影 山田清志》