BASFクリエーションセンター《撮影  内田俊一》

BASFは8月1日に横浜イノベーションセンターにクリエーションセンターを開設。実際に素材やデザインを見てもらうことで、クライアントとの相互理解をより深めることを目的としている。

◆協業を目指して

クリエーションセンターは5月にインドのムンバイに開設以降、日本、中国の上海に8月21日、そしてドイツのルートヴィヒスハーフェンに2020年第一四半期にオープンが予定されている。

「お客様に我々の素材を実際に見て、手に触れて、理解してもらうことで、未来の用途や製品作りに向けて一緒に協業をしていくこと」と同センターの使命を語るのは、BASFクリエーションセンターアジア太平洋地域リーダーのアレクサンドル・ドレイヤー氏だ。そして、「未来はただ待っていても来るものではなく、自分たちで形作るもの。それにはクリエーションセンターのような機能を持つ組織が大きく貢献していく。我々はグローバルなネットワークを持っているので、世界で連携して新しい未来の製品などの開発に貢献していきたい」と述べた。

◆アイディアから性能試験まで一貫

クリエーションセンターはBASFのお客様(自動車メーカーをはじめ、建設・土木、工業・産業などからシューズメーカーなど多岐に渡る)が、「最初に我々の製品、もしくは我々のソリューションに触れることが出来る場所だ」と位置づけるのはBASFジャパンパフォーマンスマテリアルズ事業部執行役員事業部長の山本勇氏だ。

クリエーションセンターがある横浜イノベーションセンターには、「コンピューター解析でプラスチックを使った部品を設計するグループ(CAE)や、設計したものを形にし、本当に部品として機能するか、ひとつひとつの性能を満足させる仕上がりかを測定するなどモノ作りをするラボが存在し、それらを有機的に繋ぐのがクリエーションセンターだ」と述べる。つまりアイディア出しから、モデル作成、そしてその性能試験までがこの場で一貫して出来るというのだ。

山本氏は、「プラスチックなどの素材からパーツなど製品として形にしていくには、お客様と一緒に、どんなものを作りたいのか。用途、最適な材料、デザイン、製造方法など、どんなものづくりをすれば最適なのかが重要だ。そういったところをお客様と一緒に、例えば製品コンセプトから、もしくは製品の設計から、ものづくりのシミュレーションから一緒にやっていく。それが、クリエーションセンターが目指していく方向だ」と話す。

◆デザインファブリークからクリエーションセンターへ

実はクリエーションセンターには前身となる組織、デザインファブリークが存在する。2006年にドイツで発足し、日本にも2014年にデザインファブリーク東京という名称で横浜にオープン。上海にも2016年に開設され「素材とデザインに対する用途開発の促進やアイディアを提供してきた」と振り返るのは、BASFジャパンパフォーマンスマテリアルズ事業部クリエーションセンターデザインマネージャーの小矢畑崇氏だ。

「製品の品質を大きく左右するCMFデザイン。製品が機能面で成熟してくると、美観や所有する喜び、触ったときの心地よさといった重要性が高まってくる。我々はこの“M”の部分、マテリアルにおいて、デザイナーをはじめ材料技術の方々に対して様々なサポートを行ない、お客様とともにアイディアを創出し新しい使い方の提案を行ってきた」という。

そういったデザインファブリークの活動からより一歩踏み出した。「よりモノをクリエイトするという基準が大事になり、かつ多くなってきた。そこでデザインファブリークを進化させ、出来ることを広げて、我々のサービス内容や、提供価値の内容を定義し直した。従って今までやってきたことも包括的に行いながら、さらにプロトタイプを作ったりなどのお手伝いもしていく。そういったときに我々は材料を支給したり、作れるモノはここで作り、そうでなければ相応しい会社をつなぎ合わせるなど、多くの価値を提供する」と小矢畑氏。またターゲットもこれまでの自動車関連から、BASFが関係するすべての分野に渡ることになった。

◆3つのコンセプト(価値)

さて、このクリエーションセンターでは、3つのコンセプト(価値)を持たせている。これは「デザインファブリークがやってきたことや、これからやりたいと思っていることをうまく表現する言葉だ」と小矢畑氏。それは、“ディスカバー”、“アンダースタンド”、“クリエイト”だ。これらにより、「インスピレーションからソリューションまで、お客様のイノベーションをお手伝いする」とした。

ディスカバーは、「触る、探索する、発見する、気づく、閃く、調べるという意味。スタジオに来てもらってワクワクするような環境の中で、素材に触って何かインスピレーションを得てもらうことや、サンプルライブラリー的な機能も持たせているので、デジタルツールなどを導入し、スタジオ内での体験価値の充実を図っている」という。このデジタルツールはクリエーションセンターに置かれている素材や様々なアイテムにタブレットをかざすとその情報やイメージ写真が見られる仕組みだ。そのほかにもBASFのグローバルネットワークを生かし、「各国から素材サンプルや試作品、デモキットなどを収集し、触ったり見たり出来るような環境も持続的に整えている」。これは、「他国の事情はどうか、他の業界は何を使っているのかに関し、ここで触って知ることは大事な提供価値だと考えるからだ」と述べる。

アンダースタンドは、「お客様とBASFの相互理解。トレンド、社会、時代、ニーズについてお互いに理解すること」を指している。

ここで重要なのは、「ワークショップだ。小さなディスカッションレベルから、アイディア出しの会議などテーラーメイドで状況に応じたワークショップを実施してきた。特定のテーマに沿って、より具体的な内容を掘り下げていくということも行う」と小矢畑氏は説明する。そして、「お客様のニーズを知ることも大事。お客様にBASFの素材をよく知ってもらうことも大事。どんなことをしたいのか、どんなことが出来るのかについて相互に理解を深めることが重要なのだ」とした。また、様々なイベントに出展し、ワークショップなどを開催。「デザイン系イベントにはデザイナーがたくさん来る。これまで出会いのなかった会社のデザイン部門と繋がることが出来るのは大きな収穫だ。またデザイナーからのフィードバックはトレンドや時代の気分、見据えている未来像など普段我々が得られない多くの情報を得ることが出来るので出展するメリットは大きい」とコメント。そのほかにもコミュニケーションアイテムとしてマテリアルセレクションというトレンドブックも発刊。「デザイナーを中心に素材の魅力を伝える活動として、このアンダースタンドという言葉の中に含まれる大事な活動のひとつだ」とした。

最後はクリエイトだ。これは「素材を形にする、創造する、試しに作ってみる、作ってみて確認するといったことを指す」。「開発の初期段階において素材を含めて検討したいお客様や、これまで経験のない素材を使ってみたいというお客様、コンセプトモデルやモックアップを作りたいお客様に提供する価値だ」という。また、「より生産に近い段階では、隣にラボやCAEチームもあるので、お客様のクリエイトに貢献できる。具体的にはラボでは射出成形や材料特性評価分析、耐久性試験、部品評価を行う体制が整っている。強度解析もそうだしシミュレーションもそうだ。製品設計のサポートなども行うエンジニアもいる」とし、これらにより、これまで以上に「お客様の役に立てるのではないか」と語った。

BASFクリエーションセンター《撮影  内田俊一》 BASFクリエーションセンター《撮影  内田俊一》 BASFクリエーションセンター《撮影  内田俊一》 BASFクリエーションセンター《撮影  内田俊一》 BASFクリエーションセンター《撮影  内田俊一》 BASFクリエーションセンター《撮影  内田俊一》 BASFクリエーションセンター《撮影  内田俊一》