パナソニックの自律搬送ロボット「HOSPI」《撮影 山田清志》

パナソニックは6月21日、汐留浜離宮ビルにある同社の「KIZASHI HUB」でロボットに関する技術セミナーを開催し、自律搬送ロボット「HOSPI(ホスピー)」の新モデルの受注を開始すると発表した。

同社は1998年に人口減少や高齢化など社会的課題解決に寄与するロボットとして、自律移動型のロボットの企画をスタートした。2004年に病院内搬送ロボット「HOSPI」、05年に愛知万博向けの屋外用清掃ロボット「SuiPPi(スイッピー)」、06年に工場用の全自動搬送ロボット「HOSPI-AL」を開発し、13年からHOSPIを病院向けに本格的に販売。これまでに国内4病院、海外1病院で導入され、現在15台が稼働している。

今回披露したHOSPIはその進化版で、「原点に立ち返って、1から開発し直した。機能向上を図り、より使いやすいHOSPIに生まれ変わった」とロボティクス事業推進部の内山博之部長。バッテリーを鉛からリチウムイオンに変更し、充電時間が約半減。駆動モーターも高トルク化して、従来よりも150%の大容量搬送を可能にした。

また、障害物センサー(LiDAR)の性能向上を図り、より安全な走行が可能になった。実際のデモでも、ポールをスムーズによけ、目の前に人が飛び出すとすぐに止まった。「新モデルでは、後方にも障害物センサーを搭載し、バック走行も可能になった。そのほか、遠隔操作機能や遠隔コミュニケーション機能、顔振り向き機能などオプション機能も新たに搭載し、シーンに合わせていろいろと利用できるようにした」と内山部長は話す

今回受注を開始するのは「HOSPI」「HOSPI Signage(サイネージ)」「HOSPI Cargo(カーゴ)」の3種類。サイネージは27型のパネルを胴体の3面に搭載し、そこにコンテンツを表示できるようになっている。内蔵PCにコンテンツを準備し、走行場所や時間によってコンテンツ表示を切り替えられるようになっている。カーゴは通常のHOSPIよりも大幅に荷物が積めるのが特長だ。

「サイネージについては、成田空港で注目度効果の検証をさせてもらったが、固定型のサイネージに比べて約3倍の注目度があった。この6月には軽井沢プリンスホテルで開催されたG20の会議案内表示用途でも活躍した。今後、収納庫や外装を変えることで、さまざまな用途への展開を検討していきたい」と内山部長はその可能性に期待を寄せる。

デモでは、オフィス内を想定したドリンクの搬送も行って見せた。時間になると、社内を回って社員にドリンクを届けるということだが、その際、声を掛けたり、頭部を動かして愛嬌を振りまくそうだ。ただ、価格が1台約1300万円もするので、普及させるには大幅なコストダウンが必要なのは間違いないだろう。

いずれにしても、パナソニックは「技術10年ビジョン」のもと、より良いくらしと社会の実現に向けてロボティクスの開発に力を入れている。「HOSPI」もその一環だが、サービスにとどまらず、介護・医療、農業、インフラ点検、災害対応などさまざまなロボットを製品化していく方針だ。

障害物をよける「HOSPI」《撮影 山田清志》 ドリンクを運ぶ「HOSPI」《撮影 山田清志》 ロボティクス事業推進部の内山博之部長《撮影 山田清志》