ミシュラン雪上試乗会

夏タイヤの性能は申し分ないことを確認できたミシュランの『クロスクライメート』を、今度はいよいよ冬の北海道で試すことができた。場所は北海道北部の中央に位置する士別の寒冷地試験場だ。

◆アイス路面で比較、違いは歴然

当日はかなりの雪で、ときおり吹雪も。下は凍っていて、その上に柔らかい雪の乗った、条件としてはかなり厳しいコンディションでのテストとなった。

そんな中、まずはスノーとアイスの混在した路面のコースにおいて、日産『リーフ』でサマータイヤの『エナジーセーバー』との比較から開始。スタート位置から最初に氷上での加速を試し、それからフルブレーキング。さらに雪上のブレーキング、そして簡単なスラロームといった、市街地や一般道を想定したコースで、サマータイヤとどれぐらい違うかを体感する。ミシュランとしてもアイス路面での使用は推奨しないが、現実にはアイスもあるので確認しておいてほしいとのことだった。

違いは歴然。氷上では、サマータイヤは発進すら難しいところ、クロスクライメートはこともなげに走り出し、しっかり前に進んでいく。ゆえにブレーキングポイント手前で、サマータイヤでは20km/hに達しないところ、クロスクライメートは30km/hほど出てしまったので、条件を合わせるために減速する必要があったしたぐらい。

そしてフルブレーキング。クロスクライメートもアイスでの使用は推奨されておらず、やはりスタッドレスタイヤほど止まらないのは否めないが、かろうじてサマータイヤよりはやや短い距離で止まったという感じ。加速時のトラクションの感触からするともう少し差がつくと思ったのだが、アイスブレーキに関してはそうでもなかった。

ところがそこから先の圧雪上ではもっと差があった。アクセルを踏めばパッと加速するし、車速の乗り具合がぜんぜん違う。リーフはトラクションに関してはグリップのピークを常に掴めるよう相当に緻密な制御を行なっているのだが、だからこそ違いがよくわかった。スラロームでの応答遅れ感も圧倒的に小さく、ブレーキングではギュッとしっかり止まる。

◆スノー路面の登坂は、いきなりクロスクライメートの出番

次いで、スノーの登坂性能を同じくサマータイヤのエナジーセーバーと、日産『ノートe-4WD』で比較。6%、8%、13%のそれぞれの傾斜角の路面で一旦停止して再発進できるかどうかを試す。e-4WDなので後輪も駆動できるが、それは最後の手段。最初は前輪のみの2WDで、サマータイヤで試し、登れれば次の角度へ進む。だめだったら、その角度のポイントでクロスクライメートを履くクルマに乗り換えて発進できるかどうかを試す。

さっそくサマータイヤで6%から。じわっとアクセルを踏んでもぜんぜん前に進まないので、もっと強く踏んでみたり、トラクションコントロールをOFFにしたり、後ろに下がって発進してみたりしたのだが、ぜんぜんダメ。ということで、いきなりクロスクライメートの出番となった。

同じく2WDで6%の登坂だが、アクセルをごくふつうに踏んでみたところ、ほぼ空転することもなく前に進んでいった。アクセルを踏んだ瞬間の感覚がぜんぜん違って、本当に同じ路面と思っていいのだろうかという気がしたぐらい違った。

次いで8%でも、6%のときとそれほど大差ない印象で簡単に発進できた。すごいぞ、クロスクライメート! …と思ったのも束の間、さすがに13%はキツかった…。アクセルの踏み方をコントロールしたり、少しバックしたししてみたのだがどうにも無理。そこで2WDは断念して4WDにしてみたところ、いとも簡単に前に進むことができた。やはり4WDは偉大だ。北海道では4WDがもてはやされている理由をあらためて思い知った次第である。

実のところ、本テストは路面のコンディションにかなり左右されるそうだ。筆者らのときは、凍った上にふわふわの雪がたくさん乗った状態で、路面を掻くことができず浮いてしまう感じになっていた。2WDでも、もう少し雪が少なかったり圧雪だったら行けたはずだ。むしろ、そんな状況でもサマータイヤでは6%でも登坂できなかったところ、クロスクライメートは2WDである程度の勾配は登れたことを褒めるべきだろう。

さらに、比較ではなく単独で、メルセデスベンツ『GLA』を駆りレーンチェンジやスラローム、S字などの設定されたコースでトラクションやブレーキ、ハンドリングなどをいろいろ試したところ、これが実に楽しかった!

十分にグリップがあって、流れても唐突にすっぽ抜けることもなく、リアがかいてくれるので積極的にコントロールしていけて、行きたいところに自在に行ける感じ。2WDでも十分に雪上を走れることを確認した上で、4WDならさらにクロスクライメートでもこんなに楽しく走れることがよくわかった。

最後に、テストドライバーの運転するリーフに同乗して、長い上り坂で加速Gを体感。それまで感じてきたグリップの高さをあらためて確認することができた。

◆ターゲットユーザーには十分すぎるほどの価値

こうしていろいろな走らせ方をして、クロスクライメートは「雪も走れる夏タイヤ」というコンセプトをしっかり実現していることがよくわかった。ここまで走れると過信してしまいそうなほどだが、念を押しておくと、やはり冬道における性能はスタッドレスタイヤのほうが優れていることはいうまでもなく、とりわけアイスブレーキ性能に関しては、それなりに差はあるのは事実だ。

クロスクライメートが偉いのは、これだけ雪上を走れながらも、前記事でお伝えしたとおり夏の性能が極めて高い点にある。そこはこのところ他社でもちらほら見受けられるようになったオールシーズンタイヤの中でも出色といえる。そこに共感を覚える人は、大いに試してみる価値がある。

ターゲットとしている、降雪地に住んでいないものの、たまに降る可能性があって、そんなときでもクルマを使いたい人や、スタッドレスとサマータイヤの履き替えにストレスを感じる人などにとっては、十分すぎるほどの価値がある。

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