同社取締役社長の安形哲夫氏撮影 Tomohito Noso 

ジェイテクトは12月12日、中間決算をふまえた事業戦略に関する記者説明会を開催した。ジェイテクトは電動パワーステアリングで世界トップシェアのメーカー。同社取締役社長の安形哲夫氏が説明会に登壇し、中間決算の内容から説明を始めた。

利益率が下がった理由
「上期においては、売上は増えたが利益率が下がった。(新型の)ラックアシスト型の電動パワーステアリングが中型以上の車両で搭載実績が増加してきたが、それに対応するための費用が嵩んだ結果だ。ただ下期にはその対応も終え、数量を増やすとともに利益率も挽回する。」

また2018年8月に発表した4社協業(ジェイテクト・デンソー・アイシン精機・アドヴィックス)についても言及し、「4社協業で欧州の大手部品メーカーに対抗する態勢が整った」と強調した。

今後の事業戦略
パワーステアリングはここ10年で油圧から電動へ移行した。そのなかでジェイテクトは電動パワーステアリングのトップ企業となり、確固たる地位を築いている。パワーステアリング事業について安形社長は、「電動パワーステアリングでは約25%のトップシェアだ。2位が約13%なのでダントツのトップと言える」と説明した。

今後については、ADAS(運転支援システム)にマッチした電動パワーステアリングの強みを伸ばしていくとアピールした。「自動運転対応の新システムは、ステアバイワイヤでレイアウトフリーになる。4社連合のなかでこのメリットを活かしていく。」

また駆動系部品や、工作機械などメカトロ系事業の今後について、EVの普及につれて事業が縮小するのではないか、という懸念に対し、「EVによってエンジンがなくなる、というのは誤解だ。ピュアEVは10%から20%であり、それ以外はハイブリッドないしプラグインハイブリッドになる。ゆえにエンジンはまだまだ必要とされる。ただダウンサイジングするのは間違いないので、そこに対応していく。」と説明した。

新規事業について
新規事業については、まず昨年末に発表され話題を呼んだ高耐熱リチウムイオンキャパシタが紹介された。

「(キャパシタは)通常65度以上の温度になると冷却装置が必要になるが、当社のものは85度以上まで対応しており冷却装置が不要。300社近いお客様から引き合いがあり、大変な反響だ。それに応えて生産設備を大幅に強化する。」

また、今年8月から販売を開始したパワーアシストスーツ『J-PAS』の第二弾製品『J-PAS LUMBUS』が発表された。小型化し使い勝手が向上したという。

「自分は農家の出身なので、重い米袋を担いだ経験がある。それもあって、(第一弾は)大型でパワーのある製品にしたのだが、今回の第二弾は、パワーは少し減るもののかなり小型化した。2019年春に発売予定だ。この事業は私が直轄で注力してやっている。」

J-PASシリーズは、電動パワーステアリングの開発で得た知見を応用したものだ。分解能の細かい入力の検知や、自然で滑らかなアシストを実現する技術が活かされているという。利用者からも「アシストが自然で違和感がない」と好評を得ているとのことだ。

安形社長は説明会の中で、研究開発費の増加について「環境の変化や新技術への対応にしっかり投資しないと、持続的な成長は望めない」と強調している。自動運転、電動化、新規事業への取り組みなどを見るにつけ、会社としてのベクトルは一貫しているという印象を受けた。

今期中間決算撮影 Tomohito Noso  ステアリング事業下期の目論見撮影 Tomohito Noso  ステアバイワイヤ。コラム軸がなくなりレイアウトが自由になる。撮影 Tomohito Noso  4社協業について撮影 Tomohito Noso  キャパシタの生産能力を大幅に増強撮影 Tomohito Noso  J-PAS第一弾撮影 Tomohito Noso  J-PAS第二弾撮影 Tomohito Noso  持続的な成長のために撮影 Tomohito Noso  J-PAS第一弾撮影 Tomohito Noso  J-PAS第二弾。腰の周りにあったモーターをランドセルに内蔵し、作業のしやすさを向上させた。撮影 Tomohito Noso  J-PAS第二弾撮影 Tomohito Noso