京浜急行電鉄新規事業企画室の沼田英治部長(左)とサムライインキュベート代表取締役共同経営パートナーの榊原健太郎氏《撮影 山田清志》

京浜急行電鉄は11月21日、東京・高輪の本社でイノベーション戦略についての説明会を開き、ベンチャーキャピタル(VC)のサムライインキュベートと共同で新規事業の創出を目指す「京急アクセラレータープログラム」の第2期を同日から開始すると発表した。

同社は現在、既存のビジネスをアップデートし、沿線を中心とする都市生活に新しい顧客体験を提供することを目指す「KEIKYU3.0」というイノベーション戦略を進めており、今回のプログラムもその一環だ。ベンチャー・スタートアップ企業とのオープンイノベーションにより、京急に新たな付加価値を持たせようというのだ。

「当社の沿線は同業他社と比較して、人口減少や高齢化の進展が早い。一方、品川の大開発など当社の周辺では過去に経験がないようなビッグプロジェクトも控えている。こうした事業エリアにおけるさまざまな課題を成長の好機と捉え、ベンチャー・スタートアップ企業や投資家、異業種の大企業、大学、自治体などを含めたオープンイノベーションによって事業開発を進めていきたい」と新規事業企画室の沼田英治部長と話す。

同社はすでに昨年10月に募集した同プログラムの第1期で7社を採択し、現在までに4件の実証実験や事業連携を実現している。その過程で社内の意識改革が起こり、同社では気づかなかったことが多々あったそうだ。そこで、今回第2回目となったわけだが、今回はモビリティ、くらし・働き方、買い物、観光・レジャー、テクノロジーの活用という5つのテーマで募集する。

「当社の沿線は都市部や住宅地、観光地などを包括した非常に特色のあるエリアで、そこを貫く鉄道網やバス網を中心とする移動インフラや、スーパー、百貨店などの生活インフラもある。今回の取り組みでは、各テーマにおいて顧客体験を高める新しいサービスをベンチャー・スタートアップ企業とともに生み出していきたい」と沼田部長は説明し、こう強調する。

「鉄道を軸としてさまざまな移動インフラと各サービス、および沿線の地域をシームレスにつなぐ地域連携型MaaSの実現を目指す」

同社は第2期の募集を11月21日〜2019年1月18日にかけて行い、その後選考して3月18日に5社採択する予定。4月からテストマーケティングを実施し、8月中に成果を発表することになっている。そこで、良い結果が得られれば、資本業務提携なども検討するそうだ。

沿線に住宅地やスーパーなどの生活施設をつくって人口を増やして輸送人員を上げていく。これが今までの私鉄のビジネスモデルだったが、人口減少や高齢化の進展によって、そのビジネスモデルが崩れつつある。そんな中、今年120周年を迎える京急は横浜市の日産自動車本社近くに本社ビルを建設中で来年秋に移転する。イノベーション戦略と合わせて、京急は新たな企業へと生まれ変わろうとしている。