全固体電池の例《撮影 山田清志》

富士経済は、全固体型リチウム二次電池などの世界市場を調査し、その結果を報告書「2018 電池関連市場実態総調査 No.1」にまとめた。

近年、強まる環境規制に対応するため、各国で、EVシフトの動きが強まっている。一方で、EV向けのリチウムイオン二次電池は航続距離延長や安全性などに課題もあり、大容量で長寿命な次世代蓄電池「全固体型リチウム二次電池」の開発が進められている。2020年代にはEVに搭載されるとみられる全固体型リチウム二次電池(全固体電池)。今回、硫化物系、酸化物系、高分子系、錯体水素化物系を対象に調査を行った。

報告書によると、全固体電池の2017年の市場は21億円。すでに市場が一定規模形成されているのは高分子系全固体電池のみで、海外メーカーが主導して自動車向けに展開している。日本メーカーが積極的に開発を行っているのは硫化物系全固体電池で、EV向けで2020年代前半の量産化を目指して開発が進められている。

酸化物系全固体電池の展開は僅かだが、受動部品メーカーがチップ型の開発・製品化に積極的でありIoTやウェアラブルといった小型電源部品としての採用が期待される。自動車向けなどの大型電池は、台湾や中国のメーカーが中心となって固体電解質にポリマーなどを添加した疑似固体のシート型の開発に取り組んでいる。一方で全固体のシート型は基礎研究段階で、実用化は2030年頃と予想される。

富士経済では、2035年の全固体電池市場は2017年比1327.5倍の2兆7877億円と予測。全固体電池の中では、大型化がしやすい硫化物系全固体電池が市場の形成期・拡大期をけん引するとみられ、2035年には2兆1200億円と予測している。一方、大型化に課題のある酸化物系全固体電池は2035年に6120億円と予測。安定性や安全性の高さなどから2035年以降の伸びが期待される。

全固体型リチウム二次電池(全固体電池)世界市場