昨年12月、神奈川県横浜市内の自動車専用道で発生した乗用車同士の正面衝突事故について、神奈川県警は7日、事故で死亡した逸脱側の運転者を危険運転致死傷容疑で書類送検した。てんかん発作が事故の原因とみられる。

神奈川県警・高速隊によると、問題の事故は2016年12月10日の午後3時25分ごろ発生している。横須賀市佐原付近の横浜横須賀道路(片側1車線の対面通行区間)の下り線を走行していた乗用車が道路左側の側壁に衝突。その弾みで対向の上り線側へ逸脱し、直後に順走してきた別の乗用車とも正面衝突した。

この事故で順走側のクルマに同乗していた51歳の男性が死亡。運転していた71歳の男性が重傷を負った。逸脱側のクルマを運転していた富山県内に在住する57歳の男性が死亡。助手席に同乗していた38歳の女性が全身火傷の重傷を負った。

その後の調べで、逸脱側のクルマを運転していた男性には脳腫瘍を原因とするてんかん発作の症状があり、本件事故の約1か月前にも意識障害による事故を富山県内で起こしていたこともあり、医師から「クルマの運転を控えるように」と指示されていたことが判明した。また、本件事故でも男性は事故直前にも意識障害を起こしていたとみられ、これが原因で逸脱に至った可能性が高いこともわかった。

警察では「てんかん発作が起こる可能性を認識しながらクルマを運転し、結果として死傷事故を起こした」と判断。男性を被疑者死亡のまま自動車運転死傷行為処罰法違反(危険運転致死傷)容疑で書類送検。捜査を終了させた。

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今はてんかん発作を抑制する薬もあり、これを適切に服用していれば発作を抑えられるともされているが、運転中に意識を失うという症状が周辺交通に与える影響は大きく、今回のような死傷事故に至ることも珍しくない。

発作には予兆もあり、心拍を測ることである程度の把握はできるとされている。京都府内にある繊維メーカーは「てんかん発作を事前に検知するための肌着」を大学と共同で開発しており、導電性のある糸を織り込むことで心拍のデータを常に把握。異変を検知した場合はスマートフォンのアプリを通してアラートを出す仕組みになっている。発作の1〜10分前に予兆を把握できるため、安全な場所にクルマを止めることや、症状を抑制させる薬の服用もできるようになるという。