東京メトロ日比谷線・虎ノ門ヒルズ駅（東京都港区）周辺は、「駅まち一体」となった空間として整備工事が進められている。駅の拡張工事が完成し、7月15日の初電から営業を開始した。ホームは拡幅され、虎ノ門ヒルズステーションタワーとつながった。
◆駅と街が一体となった空間
虎ノ門ヒルズ駅周辺は、街づくりを一体的に進めるため、UR都市機構が事業主体として事業を調整し、駅は東京メトロが整備工事を担当し、2020年6月に誕生した。その後、駅に隣接する虎ノ門一・二丁目地区市街地再開発事業の協力を得ながら、拡張工事を進めていた。
拡張工事の完成によって、改札を従来の地上および地下1階から地下2階に移設し、駅の東西や地上と地下との間をスムーズに行き来できるようにした。虎ノ門ヒルズステーションタワーの地下には“駅前広場”の「ステーションアトリウム」（面積約2000平方メートル）が設けられ、駅の改札口へ通じる。アトリウムの窓から駅ホームへ自然光が届き、「駅まち一体」の空間が実現した。タワーは2023年7月竣工、開業は秋の予定だ。
◆全線開業から56年ぶりの新駅開業
虎ノ門ヒルズ駅は、日比谷線霞ケ関駅〜神谷町駅間、国道1号と環状2号線の交差点付近に位置し、1964年に日比谷線が全線開業して以来、56年ぶりに誕生した新駅だ。当駅およびその周辺は、都市の国際競争力の強化に向け、「生活環境を備えた国際的なビジネス・交流拠点の整備」および「交通結節機能の強化」をめざした「特定都市再生緊急整備地域の整備計画」に位置付けられている。
その実現に向け、UR都市機構が事業主体となって関係者間調整を行なった。東京メトロは新駅整備を2016年2月に着工、既存営業路線の運行を確保しながら工事を進め、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会に合わせて2020年6月に、暫定的な出入口を設けて開業した。
◆国際的なビジネス・交流拠点の整備
その後も整備工事は進行し、ホーム下の地下2階部分に、従来の倍以上の幅員となる通路（コンコース）と改札を新設した。駅を介して虎ノ門ヒルズステーションタワーとグラスロック、そしてその先の施設と行き来できるようになり、「駅まち一体」のまちづくりが実現する。銀座線虎ノ門駅との乗り換えも、地上の街路を歩かずに済むようになる。
駅部分の総工費は約450億円。2022年度の乗降人数は1日平均3万4454人で、東京メトロ130駅中97位だった。対前年度比24％の増加で、東京メトロでは将来的には8万人規模になると予想している。銀座線・虎ノ門駅が8万0864人で39位だ。
◆パブリックアート OUR New World（Toranomon）
虎ノ門ヒルズ駅の拡張工事でひとつ特筆されるのは「パブリックアート」だ。新設された地下2階改札内コンコースに、清川あさみの原画によるステンドグラスの「OUR New World（Toranomon）」が設置された。高さ約2.7ｍ、幅約6.0ｍ。
作家は「多様なきらめきを湛たたえたガラスは、虎ノ門に集う人々の生活を彩り、明日への希望とエネルギーを増幅する。過去から未来までが織り込まれた、どこにもない都市。この懐かしくも新しい都市の風景が、虎ノ門という情報の拠点をより一層、輝かせることを祈って」とコメントしている。
東京メトロでは、ゆとりと潤いのある文化的空間の創造を目的に、駅の新設やリニューアルに合わせて「パブリックアート」の設置を推進している。
