電子情報技術産業協会の時田隆仁会長《写真提供 電子情報技術産業協会》

電子情報技術産業協会(JEITA)は6月2日、新会長に1日付で富士通の時田隆仁社長が就任したと発表し、記者会見を行った。その中で時田新会長は2022年度の重点事業として「グリーントラスフォーメーション」をあげた。

「新型コロナウイルスの感染症により、社会全体のデジタル化は過去に例のない勢いで進展しつつある。この先のデジタル化の地殻変動となるのは『カーボンニュートラル』だ。いま世界中で打ち出されているカーボンニュートラルは、本質的にはグローバル市場での選別や金融資本市場からの格付けを意味するもので、それらに対応できなければ、企業は事業継続ができなると言っても過言ではない」と時田新会長は話し、こう強調した。

「これから必要なことは、『グリーン』と『デジタル』を組み合わせること、言うなれば『グリーントランスフォーメーション』だ」

JEITAでは、昨年10月にデジタル技術を提供する企業とデジタル技術を活用する企業が双方に集う「Green×Digitalコンソーシアム」を立ち上げた。その目的は、カーボンニュートラルを軸とした世界的な潮流の中で、世界市場で戦う幅広い企業が集って国際的なルール形成をリードしていこうというものだ。

現在、IT・エレクトロニクス企業だけでなく、化学などの素材産業、物流、金融、サービス業など多岐にわたる分野の企業99社が参画している。自動車業界からはホンダとデンソーが正会員企業となっている。

「目下、コンソーシアムで取り組んでいるのが、サプライチェーン上のCO2の見える化だ。業種業態の枠を超えた各分野の専門家が集まって検討を進めている。自社の事業活動に伴う排出量の削減だけでなく、サプライチェーン全体でCO2を削減することが求められていて、それにはCO2削減量を網羅的かつ正確に把握することが不可欠。しかし、今の排出量算定方法には課題がある」と時田新会長は話す。

現在、そのオペレーションデータに関して欧米企業と覇権争いが始まっているそうで、日本勢としては向こうの都合のいいようにされてはたまらないというわけだ。そこで、共通データフォーマットや開示範囲等のルール作成に向けた検討を進めており、今年度後半には実証試験を行うという。

また、デジタル人材の育成にも力を入れていく計画で、意欲のある人がデジタルの素養や知識を習得することができるように会員企業と協力して、多様なコンテンツや機会を提供していくとしている。その一つの機会が「CEATEC」で、「最新のテクノロジーが集い、新たなサービスやソリューションなどが披露される場というのは、最高の教育の場でもある。学生にも学びの場として活用してもらいたい」と時田新会長は話していた。