カーボンナノチューブ世界市場規模推移と予測《写真提供 矢野経済研究所》

矢野経済研究所は、カーボンナノチューブ(CNT)世界市場に関する調査を実施。世界出荷量は2025年に1万トンの大台突破を予測した。

CNTは炭素のみで作られた円筒状の極小物質。単体での活用は難しいが、プラスチックや金属、ゴムなどに混ぜることで、性能を大幅に向上でき、次世代自動車にとっても欠かせない素材として注目を集めている。

調査結果によると、2020年のCNT世界市場規模は、メーカー出荷量ベースで前年比20.3%増の3265トンと推計する。世界的な環境規制強化の流れを受けて、自動車メーカー(OEM)各社が電動化を加速させる中、リチウムイオン電池(LiB)の導電助剤用途の需要がCNT世界市場を牽引している。

ここ数年はCNTの旺盛な需要を取り込むため、海外を中心にCNTメーカーの設備投資が活発化している。中国では、量産が容易な多層CNTの生産能力が2021年10月には9000トン/年を超えており、2025年には倍増の1万8000トン/年への拡張を計画。韓国でも主要企業の多層CNT生産能力増強により、2025年頃には7000トン/年規模の供給体制が整備される見通しだ。一方、量産が困難な単層CNT市場でも既にロシアで80トン/年の量産設備が稼働。今後も欧州や韓国で100トン/年規模の生産設備の新設が予定されている。

2020年における多層CNTの世界市場規模は、メーカー出荷量ベースで同20.1%増の3250トンと推計する。地域別の需要構成比をみると、LiB導電助剤としての採用が拡大傾向にある中国が約80%。欧州7%、日本4%、北米3%と続く。欧州や北米では、樹脂・ゴム複合材料向け用途での採用が中心とみられるが、今後はLiB導電助剤向けの需要も立ち上がってくると予測。その他では、韓国や東南アジアなどで多層CNTに対する一定の需要がある。

EVのさらなる航続距離の伸長、急速充電性能向上に寄与する高容量LiBの開発では、導電助剤としての多層CNTの役割が重要性を増すものと考える。今後も、LiB導電助剤向けの需要は順調に拡大していく見込み。また、樹脂・ゴム複合材料用途などでも着実に新規採用が進む見通しで、CNT世界市場規模(メーカー出荷量ベース)は2025年に1万1209トンに拡大すると予測する。