優勝した#7 トヨタの(左から)コンウェイ、ロペス、可夢偉。《Photo by TOYOTA》

世界耐久選手権(WEC)第5戦の決勝レースが現地10月30日、バーレーン・インターナショナル・サーキットにて実施され、ハイパーカー・クラスの「トヨタGR010 HYBRID」小林可夢偉組が3連勝を飾った。トヨタは開幕5連勝、ハイパーカー初代のチーム部門世界王者となった。

WECの2021年シーズンは全6戦、その第5〜6戦はバーレーン・インターナショナル・サーキットでの連戦というかたちになった。今回の第5戦(10月30日決勝)は決勝6時間、そして次週(11月6日決勝)の最終第6戦は決勝8時間という設定での実施になる。8月に開催されたルマン24時間レース(今季WEC第4戦)以来、約2カ月のインターバルを挟んでの実戦再開でもある。

第5戦の総エントリー台数は32台(決勝出走31台)。今季から「ハイパーカー・クラス」となった最高峰クラスはグリッケンハウス勢の参戦がなく、前戦ルマンから2台減って3台の戦いになった。LMH(ルマン・ハイパーカー)規定車はトヨタGR010 HYBRIDの2台(#7、#8)のみ、これに旧LMP1規定のノンハイブリッド車で参戦しているアルピーヌA480-ギブソン(#36)を加えた計3台である。

(*アルピーヌは2024年からLMDh規定車でのハイパーカー・クラス参入の意向を10月上旬に表明。また、旧LMP1規定車については来季2022年もWECでの使用が認められることになった)

予選ではトヨタの8号車(中嶋一貴 / S. ブエミ / B. ハートレー)がポールポジションを獲得、僚機の7号車(小林可夢偉 / M. コンウェイ / J-M. ロペス)が2位に続いた。アルピーヌの36号車(A. ネグラオ / N. ラピエール / M. バキシビエール)は3位。

ドライコンディションの決勝6時間レースは、次週に同地にて最終戦を控えている影響もあったのだろうか、全般に比較的平穏な推移となる。トヨタ勢同士の優勝争いは次第に7号車が優位をかためていく流れとなり、残り2時間頃のルーティンピット時、追う8号車の方にタイヤ交換のタイムロスがあって、ほぼ“勝負あった”の形勢に。

#7 トヨタ(可夢偉組)が第3戦からの3連勝で今季3勝目を飾り、約51秒差の2位に#8 トヨタ(一貴組)という結果に第5戦バーレーン6時間は収束した。#36 アルピーヌは1周遅れの3位。トヨタの1-2フィニッシュは今季3回目で、トヨタGR010はデビューから負けなしの開幕5連勝となった。同じクラスの台数が少ないという要素はあるが、今季全勝の快挙まであと「1」だ。

今回の結果をもって、トヨタ(TOYOTA GAZOO Racing=TGR)は“初”のハイパーカー・クラス世界選手権タイトル(チーム部門)獲得を決定。自分たちが“対象”となるチーム部門の世界タイトル獲得、という意味では、2018/2019シーズン、2019/2020シーズンに続く3連覇達成である(2014年シーズンを含め、“団体で競う部門”の世界タイトル獲得は現行WECで通算4回目)。

また、ハイパーカー・クラスのドライバー部門世界タイトルの行方が最終戦を残してトヨタ勢に絞られた。トヨタのドライバーズチャンピオン輩出および“対象の世界タイトル2冠独占”も3シーズン連続となる(いずれもやはり、2014年シーズンを含め通算4回目)。

優勝した#7 トヨタ 小林可夢偉のコメント
「チームが素晴らしい仕事をしてくれました。ハイパーカーでの世界タイトル獲得を全員で祝いたいと思います。金曜日(予選日)にちょっと苦戦しましたが、原因を見出すことができ、決勝レースには自信をもって臨みました。決勝レースではチーム全員が素晴らしい仕事をしてくれましたし、マイク(コンウェイ)とホセ(ロペス)も力強いペースで走ってくれました。彼らのおかげで良いポジションで走ることができ、自分のスティントもとても順調でした」

「最後、チェッカーフラッグまでのスティントを走ったときは気温がわずかに下がっていたことも良かったのか、自分自身にも、タイヤにとっても大きな負担にはならず、後続とのギャップを保って最後まで走り切るだけでした」

2位の#8 トヨタ 中嶋一貴のコメント
「暑さで大変なレースでしたが、終盤にはそれもちょっと和らぎました。我々(8号車)は限界ギリギリを狙った攻めのセットアップを試しましたが、それはあまりうまくいきませんでしたね。とはいえ、2位でフィニッシュでき、まだ逆転ドライバーズタイトルの可能性は残っています」

「優勝した7号車、本当におめでとう。そして、TOYOTA GAZOO Racingもチームタイトル獲得にふさわしい働きだったと思います。今日チームタイトルを決められたことで、最終戦は楽しみながら、全力でドライバーズタイトル争いができるでしょう」

ドライバーズタイトル争いは、#7 可夢偉組が15ポイントリード(145対130)で最終戦に向かう。8時間レースの最終戦は決勝のポイントに“割り増し”の適用があり、優勝38点、2位27点、3位23点(ポールポジション獲得の1点は通常通り)。追う#8 一貴組には自力逆転の可能性が残っておらず、#7 可夢偉組が有利な状況での最終決戦となる。

第5戦でのLMGTE-Amクラスにおける日本人ドライバー勢搭乗マシンの成績は、木村武史の#57 フェラーリ(Kessel Racing)がクラス9位、藤井誠暢と星野敏の#777 アストンマーティン(D’station Racing)が同11位だった。

次週、決勝8時間の最終戦(第6戦)が同じくバーレーン・インターナショナル・サーキットで開催される。決勝は現地11月6日の予定だ。

(*本稿における順位等は、日本時間10月31日12時の時点でのWEC公式サイトの掲示内容等に基づく)

第5戦バーレーン6時間レース、開戦の模様。《Photo by TOYOTA》 #7 トヨタが優勝を飾る。《Photo by TOYOTA》 #8 トヨタは2位に。《Photo by TOYOTA》 3位の#36 アルピーヌ。《Photo by FIA-WEC》 1-2フィニッシュを飾ったトヨタ勢。《Photo by TOYOTA》 トヨタWECチームに新たな王冠が加わった。《Photo by TOYOTA》 最終戦も舞台はバーレーン。今回からの連戦というかたちで、11月6日決勝の日程にて開催される。《Photo by FIA-WEC》