第13戦は#12 ウィル・パワーがポール・トゥ・ウインを飾る。《写真提供 INDYCAR》

インディカー・シリーズ第13戦が現地3日、インディアナポリス・モーター・スピードウェイのロードコースにて開催され、ウィル・パワーが全周回首位という完勝劇を演じた。佐藤琢磨は14位。S. ディクソン対J. ニューガーデンの王座争いは最終戦に決着が持ち越された。

2020年シリーズも大詰め、インディアナポリス・モーター・スピードウェイ(米インディアナ州)のロードコースを舞台にしたダブルヘッダーのレース2(シリーズ第13戦)が“ラスト前”の一戦ということになる。ドライバーズタイトルの行方はトップ2に絞られており、スコット・ディクソン(#9 Chip Ganassi Racing/エンジンはホンダ)とジョセフ・ニューガーデン(#1 Team Penske/シボレー)の争い。最終戦ひとつ前のレースなので、当然ここで決まる可能性もある。40点リードのディクソンが“王手”ともいえる戦況だ。

決勝当日の予選でポールポジションを獲得したのはウィル・パワー(#12 Team Penske/シボレー)。ニューガーデンは9位、ディクソンは15位という予選結果にとどまっている。佐藤琢磨(#30 Rahal Letterman Lanigan Racing/ホンダ)は17位。

この日の決勝(路面ドライ)は75周、これは前日のレース1(シリーズ第12戦)よりも10周少ない設定だが、この周回数なら燃費的には2ストップの現実味が増すと見られた。実際に多くの陣営がほぼ25周ずつの3スティント、2ストップ作戦で戦っていくなか、レースは前日同様にノーコーションの落ち着いた展開となる。

そしてポール発進のパワーは75周の間、一度もラップチャート最上段から動くことなくポール・トゥ・ウインを飾った。終盤、コルトン・ハータ(#88 Andretti Harding Steinbrenner Autosport/ホンダ)に迫られる場面こそあったが、まさしく完勝といえるかたちで勝利をおさめた。

インディカーで全周回首位の優勝というのはあまりない状況だと思われる。もちろんパワーと彼のマシンの力の充実が土台にあってこそのことだが、彼を含む大半のドライバーがほぼ25周毎にピットに入らなければならないためピットタイミングの幅が狭く、なおかつフルコースコーションによる外乱も生じなかったための怪現象、ならぬ“快現象”だったともいえるだろう。見事な今季2勝目だった。

2位はハータ。3位にはアレクサンダー・ロッシ(#27 Andretti Autosport/ホンダ)が入り、4位にニューガーデン。そしてディクソンは8位という決勝結果であった。

さて、これで注目のチャンピオン争いはディクソンのリードが32点へと縮まって、次戦最終戦へと持ち越されることに。

インディカーは通常の1レース最大獲得ポイントが54で(優勝50点&各種ボーナス最大4点)、今年は最終戦の決勝順位得点2倍という規則がない。あくまで手元の計算と理解によるところだが、追いかけるニューガーデンが最終戦でマキシマムポイントを獲得した場合でも、逃げるディクソンは決勝9位で王座をつかめるはずだ。

ディクソンの圧倒的優位は変わらない。でも、数字上のそれよりも形勢的には接近して見えるのも事実。ここ最近のディクソンとニューガーデン、両者のレース内容と結果を考えると、数字ほどの開きはないような気もするが……?(5戦連続でニューガーデンが先着中)

なにはともあれ、ディクソンの2年ぶり6冠目か、ニューガーデンの2年連続3冠目か、コロナ禍のシーズンの王座争いに終止符が打たれる。

琢磨は第13戦の決勝レースを、予選順位より3ポジションアップの14位で終えた。

#30 佐藤琢磨のコメント
「今日のレースでも(前日同様に)フルコースコーションが出なかったため、作戦を活用することや、(展開も利して)ポジションを大きくゲインすることが難しい戦いになりました。それでもスタートからゴールまで全力で戦い、その結果として終盤に順位をいくつか上げることができました」

「一度、他車との接触があり(コース脇の)芝生に押し出されました。あのコースオフでポジションを下げたのは残念でした。バトルを懸命に戦って(最終的に)14位というのは少々フラストレーションがたまる結果ですが、今日は少なくともレースをハードに戦い抜くことができたと思います」

琢磨のシリーズランキングは7位で変わらず。ただ、上位6人が今回は皆、琢磨より上の決勝順位だったため、ランクアップへの道は険しくなってしまった。

ランク6位とは26点差、ランク5位とは48点差。やはり手元の計算と理解に基づく話になるが、インディカーの場合は通常、決勝に“出走”しさえすれば25位以下でも5点入るはずなので、最終戦にも今回同様25台(以上)のエントリーがあり、自分が54点をフル獲得した場合でもランク5位まで届く可能性には現実味がない(エントリー台数次第では数字的な“権利”さえも消える)。

現在ランク6位は琢磨の僚友グレアム・レイホール(#15)。できれば彼を上まわって6位へ、少なくとも7位を死守(8位とは17点差、9位とは23点差)、というのが琢磨の今季最後のターゲットということになりそうだ。とにかく、2度目のインディ500優勝年をいいかたちで締めてもらいたい。

最終戦(第14戦)の開催地は、本来なら3月に開幕戦を行なっているはずだったフロリダ州のセント・ピーターズバーグ市街地コース。現地10月25日に決勝実施予定となっている。

なお、今回のレースウイーク中にインディカー・シリーズは「ホンダとシボレーのシリーズへの新たなロングタームのコミットメント(長期間の関わり)が確定した」との旨を発表した。ホンダに関してはF1参戦終了の発表があったばかりだが、北米トップカテゴリーでは今後も多くのチーム、ドライバーを支えていくことになる。

優勝を喜ぶ#12 ウィル・パワー。《写真提供 INDYCAR》 第13戦の表彰式、優勝は#12 ウィル・パワー(中央)。《写真提供 INDYCAR》 決勝2位の#88 ハータ。《写真提供 INDYCAR》 決勝3位の#27 ロッシ(前日とは異なるカラーリングで臨戦)。《写真提供 INDYCAR》 #1 ニューガーデンは決勝4位。最終戦に逆転王座の可能性を残した。《写真提供 INDYCAR》 王座へ向け、やや足踏み状態のシリーズリーダー #9 ディクソン(今回決勝8位)。《写真提供 INDYCAR》 #30 佐藤琢磨は今回決勝14位だった。《写真提供 INDYCAR》