ソフトバンクグループの孫正義会長兼社長

ソフトバンクグループ(SBG)は5月18日、2019年度連結決算を発表した。孫正義会長兼社長はオンライン会見で「コロナ危機の中でより安全運転をする」と述べ、2020年度の配当についても安全運転に徹するそうで、「ゼロ配当もあり得る」と付け加えた。

2019年度の売上高は前期比1.5%増の6兆1850億円だったが、営業損益は1兆3646億円の赤字(前期は2兆736億円の黒字)、純損益は9615億円(同1兆4111億円の黒字)になった。SBGが最終赤字になるのは15年ぶりだ。

約10兆円を運用する「ソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)」で、投資先の企業価値が大幅に目減りして営業損失が1兆9313億円と、前期比で3兆1979億円もマイナスになったことが響いた。米配車サービス大手のウーバー・テクノロジーズや米フィスシェアのウィワークなどの公正価値が大きく減少したことに加え、新型コロナウイルスの感染拡大によりそのほかの投資先の公正価値も下がったことが影響した。

特に2019年度第4四半期(1〜3月期)は、最終損益が1兆4381億円の赤字となり、日本企業の四半期赤字額では、東日本大震災時の東京電力ホールディングス(11年1〜3月期1兆3872億円の赤字)を超えて過去最大だった。

「2月の決算発表時点では、コロナの影響が世界の経済を真っ逆さまに落とすまでとは思っていなかった。今は人類に対する大きな脅威だ。また秋とか冬の第2波の広がりもあるかもしれないので楽観はしていない。先行きは誰も分からない」と孫社長はできる限り保守的に見ることにしたという。

「従来は事前に配当方針を公表しているが、経営の選択肢としてその幅を持っておこうと思う。こんなことは上場以来初めてだと思う」と配当未定の理由を述べ、2019年度の44円〜0円の幅を持たすことにした。

また、新規投資については打ち止めにする方針で、これまで投資をしてきた88社について「15社ぐらいは倒産するんじゃないかと思っている。また15社ぐらいは飛んでいって大きく成功すると見ている。残りはまあまあの状況になるのではないか。飛んでいった15社が5年後、10年後にわれわれの投資価値の90%くらいになるのではないか」と孫社長は話し、こう付け加える。

「ネットバブルが崩壊したときも、アリババ、ヤフーなどほんの一部の会社が90%を生み出した。残りは倒産したり、生きていてもまあまあという状態。同じことが今回も起きるだろう」

孫社長は今回の大赤字について、それほど気にする様子を見せずに「コロナショックは新しい時代のパラダイムシフトを加速する」との見解を示した。