マセラティ・クアトロポルテ・ロワイヤル(1986年)《photo by Maserati》

マセラティは12月16日、イタリアの大統領の公用車として『クアトロポルテ』(Maserati Quattroporte)が導入されて、40周年を迎えたと発表した。

◆ジウジアーロがデザインした3代目が初の公用車に

イタリアのサンドロ・ペルティーニ大統領は1979年、公用車として、クアトロポルテを選んだ。これが、マセラティのイタリア大統領の公用車としての歴史の始まりだ。

1979年12月14日、3世代目のマセラティ・クアトロポルテが、サンドロ・ペルティーニ大統領に納車された。ジウジアーロによって設計された3世代目のクアトロポルテは、デトマソ傘下(1976〜1993年)のマセラティが、最初に開発した新型車だった。

1963年に登場した初代クアトロポルテに触発されたボディラインは、フォーマル志向のデザインだった。豪華で洗練されたインテリアも特長だった。V型8気筒ガソリンエンジンには、最大出力255hpの4.2リットル版と、280hpの4.9リットル版の2種類が用意された。最高速は220km/h。合計2145台が販売されている。

◆1983年には防弾仕様のクアトロポルテを納車

1982年には、イタリア大統領府は、マセラティに大統領が乗る防弾仕様のクアトロポルテを製作するよう依頼した。マセラティは1983年、サンドロ・ペルティーニ大統領に、ダークアクアマリンのボディカラーに、ベージュのベルベット内装のクアトロポルテを納車している。

この車の特長のひとつは、後部座席の間にパイプホルダーを備えた大きな灰皿だった。また、車内にはバーキャビネット、電話システム、車外の人と通信するためのインターホンも搭載されていた。

キャビンは完全に防弾対策が施され、高強度のマンガンメッキが使用された。ウインドウは厚さ31mmで、ポリカーボネート素材が採用されていた。

パレードなどでの使用も想定されており、リアシート頭上のルーフは電動開閉式だった。パレード中に立ち上がる大統領のために、右フロントシートの背面には、特別にハンドルが取り付けられた。

◆フェラーリ訪問時に起きた事件

ペルティーニ大統領とマセラティの関係は、1985年まで続いた。ペルティーニ大統領は、常にマセラティに乗っていた。1983年5月29日、ペルティーニ大統領はイタリア・マラネロのフェラーリ工場を、マセラティに乗って訪れた。

しかし、フェラーリと競合するマセラティに乗った大統領と面会することを、フェラーリ創業者のエンツォ・フェラーリは拒んだ。エンツォ・フェラーリは、マセラティ車からおよそ10m離れたところで静止。高齢のペルティーニ大統領はクアトロポルテから降りて、エンツォ・フェラーリに歩み寄ったという。この「マラネッロの訪問」は、ペルティーニ大統領とマセラティに関するエピソードのひとつだ。

1986年には、クアトロポルテに「ロワイヤル」バージョンが設定された。ソフトレザーシートや、ダッシュボードとドアパネルのクルミ材のウッドパネルなど、インテリアにアップグレードが施された。収納式の折りたたみテーブルのコンパートメントには、無線電話も装備された。4.9リットルのV8エンジンは、最大出力を300 hpに強化した。わずか51台のみが生産されている。

◆最新モデルもイタリア大統領の公用車に

最新のクアトロポルテも、イタリア大統領の公用車だ。2019年6月2日、イタリア共和国の建国記念日に、セルジョ・マッタレッラ大統領は、特別なブルーのボディカラーをまとった最新のクアトロポルテでパレードした。

専用のレザーとブラックピアノパネルを組み合わせ、キャビンの静粛性にも特別な配慮が施された。3.8リットルV型8気筒ガソリンエンジンを、2個のターボで過給し、最大出力530 hp、最大トルク66.3kgmを獲得する。

マセラティは、イタリア大統領に特別な車を提供してきた伝統を続けている、としている。

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