優勝を飾った#1 レベリオン。《写真提供 FIA-WEC》

世界耐久選手権(WEC)2019/2020シーズン第3戦「上海4時間」は10日、決勝レースを行ない、LMP1クラスではブルーノ・セナ(アイルトンの甥)らのレベリオン・レーシング1号車が優勝した。トヨタ勢はサクセスハンデ制により苦闘を強いられたが、2-3位を確保。

最高峰LMP1クラスにハイブリッドマシンでワークス参戦する自動車メーカーがトヨタのみという状況のなか、今季(2019/2020シーズン)は従来からの性能均衡化策に加え、サクセスハンデ制という仕組みが新たに設けられた(最終戦の20年ルマンは適用外)。これは獲得総ポイントを基準にして、燃料流量等、複数の技術項目によってシリーズ上位車にハンデを課すもの。

第2戦を終えてトヨタ(TOYOTA GAZOO Racing=TGR)の「トヨタTS050 HYBRID」2台は1勝&2位1回(ポールも1回ずつ)で獲得ポイントトップに並ぶ。両車は今回の第3戦上海において、ハイブリッドパワーが約45%削減されるなどしているといい、練習走行からノンハイブリッド勢との“逆転”現象が現実のものに。厳しいハンデの影響は、特にストレートでの苦しさとして顕著に出ているようだ。

ドライの予選では5台参戦のLMP1クラスで、トヨタ勢2台は4位と5位。ノンハイブリッド勢が1〜3位を占め、ポールポジションはレベリオン・レーシングの#1 レベリオンR13・ギブソン(B.セナ/G.メネゼス/N.ナト)が獲得した。

2名のドライバーのベストタイムの平均によるクオリファイタイムは、ポールの#1 レベリオンが1分45秒892で、トヨタ勢は4位の7号車(小林可夢偉/M.コンウェイ/J-M.ロペス)が1分47秒235、5位の8号車(中嶋一貴/S.ブエミ/B.ハートレー)は1分48秒180だった。トヨタ勢はハンデ状況を鑑み、ポール争いをあきらめてレースへの新品タイヤ温存を図るなどしている。

やはりドライコンディションの決勝、スタートでは先頭#1 レベリオンがトラブルかと思うくらいにローリング隊列からの加速が鈍く見え、これに混乱したか、予選5位の#8 トヨタ以外の3台のLMP1マシン(予選2〜4位)が#1 レベリオンをスタートの合図前に抜いてしまう格好になる。3台にはのちにドライブスルーペナルティが科されることに。

レース序盤こそ出遅れたかたちの#1 レベリオンだったが、やがて主導権を握ると、他を寄せつけないトップ安泰の展開にもちこむ。トヨタ勢がサクセスハンデの影響に悩まされた好機に、それをしっかりものにするレース運びで#1 レベリオンが優勝を飾った。他のLMP1勢4台のなかで唯一、スタート時のペナルティをもらわなかった#8 トヨタが最終差1分超で2位に入り、#7 トヨタがトップから1周遅れで3位に。4〜5位はチームLNTのジネッタG60-LT-P1・AER。

TGR WECチーム代表 村田久武氏
「今日のレース、特に最初の2時間はLMP1全車による大激戦となりました。優勝したレベリオンのみなさま、本当におめでとうございます。今夜は盛大にお祝いしてください。我々はチーム一丸となり全力を尽くした結果、両車とも表彰台に上がり、貴重なチャンピオンシップポイントを獲得することができました。超高効率なTS050 HYBRIDの最適化に加え、的確な戦略、完璧なピット作業によりこの結果を成し遂げたチームを誇りに思います」

2位 #8 トヨタの中嶋一貴
「今日は、TS050 HYBRIDをとても気持ちよく運転でき、レースを楽しむことができました。でも、レベリオンに追いつくには明らかにスピードが足りませんでしたね。今日の彼らは勝利に値する戦いぶりでした。我々は最善を尽くし、TS050 HYBRIDから(今回の規則的背景のなかで)全てのパフォーマンスを引き出すことができたので、さらに長い距離(8時間レース)で戦うことになる次戦バーレーンでの勝利へ向けての自信につながると思います」

3位 #7 トヨタの小林可夢偉
「2台そろっての表彰台は、チームにとって予想外の好結果です。勝ったレベリオンに祝福を贈るとともに、素晴らしい仕事をしてくれた(我々の)チームと、TS050 HYBRIDから最大限の性能を引き出すべく全力で一緒に戦い続けてくれたマイク(コンウェイ)とホセ(ロペス)に感謝します。自分が担当したレースのスタートでは2台のジネッタと素晴らしいバトルができましたが、上位を守るだけのスピードはありませんでした。次戦では今日とは違うレースができることを期待しています」

2016年シーズン限りでアウディが、2017年シーズンを最後にポルシェがLMP1を去って以降、2018/2019シーズンと今季(2019/2020)においてトヨタが先頭ゴールできなかったのは今回が初めて。18/19第3戦シルバーストンで1-2ゴール後に両車失格したのが18年以降唯一の負けだったが、他車に先頭ゴールを許しての敗戦は今回が18年以降初だ。

しかしながら、陣営のコメントにあるようにトヨタは状況のなかで最高の結果を出したと評すべきだろう。また、ハンデに助けられた面は否定できないとはいえ、確実にチャンスを射止めたレベリオン1号車の仕事ぶりも称賛したいところだ。

WEC19/20シーズンの次戦第4戦「バーレーン8時間」は、現地12月14日決勝の日程で開催される。

(*本稿の順位等はレース当日の暫定結果に基づく)

各クラス優勝者たち、右端がLMP1優勝のB.セナら3人。《写真提供 FIA-WEC》 勝利を祈るレベリオン陣営。《写真提供 FIA-WEC》 混乱を呼び、物議を醸したスタートシーン。《写真提供 FIA-WEC》 決勝2位の#8 トヨタ。《写真提供 TOYOTA》 2位となった(左から)ブエミ、ハートレー、中嶋一貴。《写真提供 TOYOTA》 決勝3位の#7 トヨタ。《写真提供 TOYOTA》 上海の次はバーレーンへ、現役GPサーキットでの戦いが続く。《写真提供 TOYOTA》